いま私たちがやるべきこと〜2030年の信仰

 

AIは危険か?

 

久住寺執事 児玉 光瑞

 

◆AIは危険か?

 昔、初めて自動車を見た人は「馬がないのに動く馬車」と怖がったそうです。仕組みを知らなくても、いま自動車を怖がる人はいませんよね。むしろ怖いのは、危険運転をする人間の方です。

 今「ChatGPT」 の登場によりAIチャ ットポット(自動会話プログラム)が話題ですが、その危険性は自動車と同じことがいえます。AIはあくまで、 人間が与えたルールに従って動作するだけの人工的な道具に過ぎません。有効活用すれば、 AIは藤井聡太さんより将棋が強くなります。悪用すれば、個人情報を収集したり人を自殺に追い込んだりします。AIの危険性を主張する人は、無知か、 悪用を危倶する専門家 のどちらかです。ところが何も知らないと冷静な判断ができませんので、ある程度は知っておいた方がいいかもしれませんね。

 多くの人は「Cha tGPT」が流暢に対話できることに驚いています。これはこれで大変意義があります。 (しかし、この文章の本質はそこではないので今は論 じません) 私たちが忘れてはならないのは、 「AIに意思はない」 ということです。結局  「人間が与えたルールにしたがって動作するだけの人工的な道具」 なのです。ですから、 利用する人間次第なのです。自動車と一緒ですね。

◆仕事は奪われる?

 「AIに仕事を奪われる?」との議論もナンセンスです。水は高いところから低い方へと流れるように、人間も便利な方へと進んで いきます。このような不可逆な科学技術の変化をイノベーションと呼びますが、自動車というイノベーションが 起こった現代において、御者や馬宿は必要ないですよね。同様に2030年あたりに は、現在ある仕事の65 %が変化するという専門家の発言が話題になりました。2013年の世界経済フォーラム でのことです。

 失う仕事がある一方で、例えば、自動車の充電スタンド、もしく は水素ステーションのように、新たな仕事も たくさん登場するでし ょう。AIの本質と動作原理さえ分かっていれば、私のように専門な仕事をさせるのか は、人間意思です。 自動車事故の責任は、 自動車ではなく運転手ですよね。それと同じこと。「AIに仕事を奪われる」は、AIがまるで人格を持ったかのように擬人化した表現だから、ナンセンスなのです。

◆むしろAlは希望

 AIは聞違えません。面倒な仕事も文句 一ついいません。一方で独創的な仕事はできませんし、 指示が不十分ならちゃんと動きません。だっ て、意思を持った人間 じゃないのですから。 だったら、間違えてはならない仕事や面倒な仕事だけをさせればよいだけです。いつどんな道具でも、主導権は人間なのです。

 AIの危険性より、 憂慮すべき問題は他にたくさんあります。例えば人口減少問題。日本は今後80年程度は、 ほぼ間違いなく人口が減り続け、これによる働き手不足や物価高騰の影響は、かなり深刻です。ですから、今後、 AIを含めた機械化がますます進むでしょう。ちなみに、私も数か月前から、AIを利用してこの文章を書いています。とても便利な代物ですよ。

 イノベーションは、 これからも確実にたく さん生まれます。「A Iはわからん。昔はよかった」と嘆くのが大聖人の教えだと思いますか。正しい教えは、 「昔はあった」のではなく「昔からある」のです。そして今も未来も変わりません。仏の智慧とは、超能力で世の中の流れを止めることではありません。道理を悟り、この身のままこの世界で幸せの境界に至ることです。流布は「教機時国教法流布の前後」に依ります。

 そうであれば、私たちが行うことは唯一、 時代の変化に対応し、 道理を伝えることなのです。

 

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