テニスの西岡良仁、伊達公子……次世代のために大会創設
大東建託オープンの記者会見で。左から杉山愛さん、伊達公子さん、森上亜希子さん(東京都江東区)
テニスの世界ランキングで日本男子として初めてトップ10入りを果たした錦織圭(ユニクロ)、日本人初の四大大会優勝を果たした女子の大坂なおみと、2010年代、日本から世界的なスターが出た。だが、国内の若い世代に目を移すと男女ともに伸び悩んでいる。「大会数が少ないのも一因では?」と、危機感を抱いた選手、OGたちが立ち上がった。
女子世界ランク自己最高4位の伊達公子さんの声かけで、世界トップ50入りしたOG9人で発足した「Japan Women's Tennis Top50 Club(JWT50)」は、今年から国際テニス連盟(ITF)公認の「大東建託オープンsupported by JWT50」など計6大会を立ち上げる。伊達さん、元世界8位の杉山愛さん、同41位の森上亜希子さん、同39位の小畑沙織さんがトーナメントディレクターを務める。
「華やかな部分ばかりに目がいくけれど、土台がなければ頂点もない。選手だからこそ分かる」と伊達さん。日本には、プロへの第一歩となる一番下のカテゴリーの国際大会がほとんどない。「私たちの頃にはあったのに。国内で(プロ人生の)スタートを切れる方がいい。(出場するための)経費も抑えられる」。気負わず挑戦できるよう2週以上連続で、高校総体などの国内大会となるべく重ならない日程で組んだ。
Uchiyama Cupでは内山選手(右)も運営に汗をかく(Uchiyama Cup提供)
男子は現役選手が動く。世界ランク自己最高78位の内山靖崇(積水化学)は21年、故郷・札幌で「Uchiyama Cup」を立ち上げた。「強い選手を多く出す国は国際大会の数が多い。ツアーを回り肌で感じていた」。大会が少ないと、プロと接する機会も少ないので身近な目標を持ちにくい。海外遠征は「島国の日本人には資金的、言語的なハードルが欧米よりかなり高い」。
22年からITF公認となり、あえて低いカテゴリーの大会にした。「海外に行く予算が足りないのはこの辺(ランクが低い)の選手。コーチやトレーナーも帯同でき、彼らの底上げにもつながる可能性も高まる」
「みんなうまいのに強くない」と話す世界34位の西岡良仁(ミキハウス)は、21年から、海外での活躍を目指すジュニアを対象にした大会「Yoshi's CUP」を開催。自己最高60位の伊藤竜馬(橋本総業)も今年から、エキシビション大会「竜馬カップ」を始める予定。「Yoshi's Cup」の優勝者には、「Uchiyama Cup」の主催者推薦枠、「竜馬カップ」でプロの練習相手をする権利が与えられる。選手同士ならではの連係であり、機動力といっていい。
プロの世界ツアーが確立するテニスには、アマ競技流の競技団体主導の強化・育成法はなじまず、日本オリンピック委員会(JOC)に属し、学校の部活動も統括する日本テニス協会は苦労してきた。錦織も大坂も海外育ち。こうした内山ら選手たち主導の大会は、世界と日本の現実の差を埋める一歩になるかもしれない。
ただ、日本協会との連携はまだ希薄。日本テニスの盛り上がりのために、選手ならではの柔軟で自由な発想を維持しつつ、日本協会とどう協力していくか。これからの課題だ。