育む 太田あやさん寄稿

 

東大生のノート分析 成績アップ、鍵はメモ書きにあり

 

 

授業中にあまり考えることなく、板書をノートに書き写すだけの児童や生徒は多いのではないだろうか。ノートは使い方次第では成績を向上させることができる。東大合格生のノートを多数分析してきたフリーライターの太田あやさんに苦手分野を克服するノート作りについて「授業編」と「復習編」に分けて寄稿してもらった。

ノートの取材をしていると、苦手分野について何を覚えればよいのか、どこが理解できていないかわからないと話す子が多いと感じる。原因がわからないため、対策もとれない。

学んだ内容をしっかりと身につけてテストで点が取れるようになるには、@用語や公式などの知識を「覚える」A知識のつながりや解き方の手順が「わかる」B問題集やテキストを「解ける」――この3つのステップを踏む必要がある。

いずれかの段階でつまずくことで苦手な分野ができてしまう。

@に原因がある子は、そもそも何を覚えればよいのかわかっていないことがある。自分に合った暗記法が見つからないと悩む子もいる。Aでつまずく子は、理解できない部分や解けない問題を放置してしまっていることが多いようだ。

ここまではインプットでの課題になる。

Bはアウトプットにおける課題になる。問題演習が足りず、間違えた問題の見直しがしっかりできていないと、ここでつまずく。授業で理解したつもりでも、テストになると答えが出てこないというパターンだ。

インプットしても、アウトプットの訓練をしなければ、知識を定着させ、理解を深めることは難しい。

苦手な分野がある場合、どのステップでつまずいているのか把握してほしい。

@とAでつまずいていたら「授業ノート」について見直してもらいたい。授業で使うノートは初めて出合う用語など知識を書き留める勉強のスタート地点。ただ、板書をそのまま書き写すだけでは不十分だ。

苦手分野を作らないための授業でのノート術を紹介したい。心がけてほしいことは3つある。

 

まずは色使い。色は重要な部分を目立たせるために活用する。使うのは赤、青、黒の3色のみ。

例えば、赤色はとても大切な部分に用いる。黒板に先生が色つきで書いた内容や、教科書に太字で書かれている用語などを書く。これは優先的に覚えなくてはいけない内容になる。

青色は最重要ではないが、それなりに大切と思われる部分に、黒色はそれ以外の板書に使う。

こうすることで、どこを覚えればいいのかわからないという悩みは解消され、@の過程を効率的に進めることができる。

ノートの見栄えを良くしようと、色数を増やす人もいる。どこが大切な部分なのか判断しづらくなるため、おすすめはできない。

次に、先生が口頭で説明した解説もメモすること。黒板だけをノートに書き残せばいいという認識だと、写すこと自体が目的となってしまい、授業の内容が頭に入りづらくなる。

解説をメモすることで、授業の内容を咀嚼(そしゃく)しながらノートをとることができる。

特に赤色で書いた部分に関する解説を先生がした場合は、書き漏れがないようにメモをとってほしい。ノートを見返した時も解説が書き添えられていれば、理解をサポートしAがスムーズになる。

解説をメモするコツは、ノートの3分の2の位置に縦ラインを1本引くこと。左側に板書を、右側に解説メモを書くようにスペース分けをすると、内容を整理できる。

慣れないうちは板書と解説の両方をうまく書けないかもしれないが、板書は黒板が消されるまでに書けばよいし、後から友達にノートを見せてもらって補うこともできる。

先生の解説をメモすることを優先してほしい。要領がつかめるようになっていくはずだ。

3つ目は、授業で話を聞いても理解ができなかったり、疑問に感じたりした部分などに「?」をつけること。これは苦手の芽になりかねないため、放ったらかしてはいけない。早い段階で理解や納得できるよう先生に質問するなどして芽を摘むための目印だ。

ここまでが授業中に行ってほしいノート作りになる。これらは取材した多くの東大生が「授業中に学ぶ内容を理解しきり、復習の際に授業が再現できるノート」を目指し実践していた方法でもある。次回は、授業ノートを使った復習の仕方を紹介したい。

 


 

育む 太田あやさん寄稿

 

東大生のノートに学ぶ、勉強効率化の秘訣は

 

 

授業で使うノートは、初めて出合う用語などを書き込み勉強のスタート地点になる。東大生のノート術を分析してきたフリーライターの太田あやさんは、復習の際に授業のノートに加筆をしていくことで、効率的に勉強を進めることができるとアドバイスする。前週の授業編に続いて復習時におけるノート活用法について寄稿してもらった。

授業中にノートへ真面目に板書を写すが、見返すとよくわからないノートになっていることは多いのではないだろうか。

そのためテスト前に新たにまとめノートを作り直す人もいる。問題演習に十分に時間を割くことができずに、結果的にテストで思うように点がとれなかったと、悩む中高生の声をたくさん聞いてきた。

一方で、これまで取材した東大生の多くは「授業ノート」を生かして自宅で勉強をしていた。学んだ内容をしっかり理解するために授業で書き取ったら終わりではなく、ノートに繰り返し追記しながら復習をしていたという。

前編では苦手を作らないために@用語や公式などの知識を「覚える」A知識のつながりや解き方の手順が「わかる」B問題集やテストが「解ける」――の3ステップについて説明した。そのうえで授業中にノートを作るポイントとして色の使い分けや解説メモの書き留め、疑問点に「?」をつけることをあげた。

ここからは自宅などでの復習の際に、ノートをどのように活用すればいいか具体的に説明する。

まず、授業が終わって記憶が鮮明なうちに、授業で板書や先生の口頭による解説など書き切れなかった部分を補足してほしい。

帰宅後にはノートを見直す時間を設けよう。最初に@に関して、教科書の太字部分でノートに書き込まれていない内容があれば、余白に赤字で追記する。しっかり理解するため自分なりの解説も付け加えておくこと。

知識のつながりや解き方の手順がわかるように書いておけば、見直しの際にもわかりやすく、Aもクリアできる。

苦手の芽になりかねない「?」を記した部分についても同様に、理解に必要な情報を追記しておこう。教科書やネットで調べてもわからない場合は、早めに先生に質問すること。

できればここまでを授業当日に終わらせてほしい。追記の作業を日課とすることで、テスト前に新たにノートをまとめる必要がなくなり、効率的に勉強を進められる。

テスト直前は、書き込んできたノートを開いてテスト範囲を振り返ろう。

まずは赤字で書いた部分を中心に暗記。ノートを赤色の透明シートで隠しながら覚えると、文脈を捉えながら暗記していくことができる。また、覚えづらいものは、紙に何度か書いて記憶してもいいだろう。

どうしても覚えられない用語や単語などは蛍光ペンでチェックしたり、付箋を貼ったりして、すぐに目がいくようにしておこう。誤字などのミスをしやすい部分には注意ポイントも書き添えておくと印象に残りやすい。

最後はB「解ける」ようになるための問題演習だ。テスト範囲は、最低2回は解くつもりで取り組もう。問題演習をしていくと、関連した知識や発展した内容に出合ったりする。そういう気づいたことや新しい情報もノートに書き加えてほしい。余白が足りない場合は、付箋などに書いてノートに貼ろう。

授業で学んだ内容に関連するものはひと目で見渡せるようにまとめると、体系的に理解して頭に入れることができる。

このように追記の作業をテストまで繰り返すことで、自分にとって必要な知識と情報のすべてが書き込まれたノートになっていく。スキマ時間でもいい。このノートを繰り返し読んでほしい。これにより知識が定着して理解が深まるのだ。

ちなみに、ある東大生のノートの表紙には、たくさんの用語や公式が走り書きされていた。テスト勉強中にどうしても覚えられなかったものを書き込んでいたらしい。「これならテスト直前まで眺めていられるから」と、1点でも多く取りにいく姿勢を感じた。

追記し続けたノートは、手塩にかけて育てた一冊になる。暗記し理解する過程がすべて書かれ、間違えやすいポイントも教えてくれる勉強の最高のパートナーになる。苦手だと感じることがあれば、いま一度、「授業ノート」の書き方や活用法を見直してもらえたらうれしい。

 

太田あやさん  おおた・あや フリーライター。教育分野を中心とした執筆・講演活動に携わる。「東大合格生の秘密の『勝負ノート』」「東大合格生のノートはかならず美しい」など著書多数。

 

 

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