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マスク氏、Twitter社員に迫る 「猛烈労働」か退職

 

 

米起業家のイーロン・マスク氏が米ツイッターの従業員に、長時間労働の「極めて猛烈」な職場文化にコミットするよう求め、それができなければ給与3カ月分の退職金を受け取るよう促した。会社に残るかどうか決断を迫る事実上の最後通告だ。

マスク氏は従業員向けの電子メールで「並外れた実績だけが及第点」と述べた=ロイター

マスク氏はスタッフに宛てた電子メールで、同氏が「ツイッター2.0」と呼ぶものを実現するためには「とことんやる必要がある」と従業員に告げた。同時に、「並外れた実績だけが及第点になる」とも断言した。

同社で働き続けることを希望する従業員は、メール内のリンクからその意向を正式に登録するよう指示された。最初に米紙ワシントン・ポストが報じ、フィナンシャル・タイムズ(FT)が確認したメールによると、米東部時間の17日午後5時までにその手続きをしなかった人は給与3カ月分の退職金を受け取ることになるという。

反対表明後に解雇された社員も 今回のメールが送られたのは、マスク氏が10月末に総額440億ドル(約6兆1000億円)のツイッター買収を完了した後、約7500人の従業員のほぼ半数を解雇してから2週間足らずのことだ。3人の元従業員によると、今週、さらにスタッフが解雇され、社内システムから締め出された。そのなかにはツイッター上や社内チャットソフト「スラック」経由で公に懸念を表明したり、反対意見を表明したりした後に解雇された人が含まれるという。

マスク氏の指揮下に入って数週間、ツイッターは大きな波乱に揺れたが、今回のメールはその最新の動きだ。その間、同社は旗艦サブスクリプション(継続課金)型サービス「ツイッターブルー」の導入に失敗し、「ブルーティック(認証バッジ)」機能がプラットフォーム上のなりすましによって悪用された。

ツイッターは先週、残っていた上級幹部の大量離職にも見舞われ、同社のデータセキュリティーとプライバシー規則のコンプライアンス(法令順守)に対して規制当局が一段と懸念を強めている。

16日には、米電気自動車大手テスラでマスク氏が受け取る数十億ドルの報酬をめぐる訴訟と関係してデラウェア州の裁判所で開かれた法廷審理で、マスク氏は「買収後、会社を再編するために」ツイッターでかなり長い時間を費やしているが、「時間をかけてツイッターを運営する他の誰かを見つける」計画だと語った。

さらに、ツイッターのリストラを手伝うために各人の意思で就業時間外に50人近いテスラのエンジニアを連れていったことも認めたが、この作業は終わり、テスラ取締役は誰も異議を唱えなかったと述べた。

「根本的な組織のリストラは今週末までに終わる」と語った。

マスク氏は15日のツイートで、有料ユーザーがブルーティックを含む追加機能にアクセスできるようにするツイッターブルーの障害が問題になっていたが、11月29日にはサービスを再開することを明らかにした。マスク時代の前に付与され、有料サービスの対価が払われていない認証バッジは「今後数カ月で削除される」と付け加えた。

16日に送られたメールでマスク氏は、ツイッターは「ソフトウエアとサーバーの会社」だと明記し、エンジニアリングに注力する方針を打ち出していた。

「デザインとプロダクトマネジメントはまだ非常に重要で私の直轄だが、素晴らしいコードを書く人たちが我々のチームの最大多数をなし、最大の影響力を持つ」としている。

仕事についてのマスク氏の最後通告に先立ち、ツイッターの従業員は先週、特別な例外が認められない限り、週に最低40時間はオフィスで勤務するよう告げられた。

同氏は直近のメールで、「競争が一段と激化する世界」でツイッターが成功するために、スタッフは極めて長い時間、高負荷の労働をこなすことが必要だ、と書いた。

最近辞めたある従業員は、ツイッターに残るかどうか迷っているスタッフがいる一方、ストレスの多い環境から抜け出したがっている人もいると話している。

 

By Cristina Criddle, Ian Johnston and Javier Espinoza

 

 

白井さゆり

慶應義塾大学総合政策学部 教授

ひとこと解説   長時間労働を要請し過度にストレスを与えるような労働環境は、ESG経営を重視の時代に異質です。米国ではESG投資が活発で労務管理の改善を重視する株主提案も多く、大企業を中心に改善が進みつつあります。コロナ感染症危機以降は、自宅勤務と対面勤務を組み合わせる働き方が世界的に増えており、勤務のほとんどをオフィス勤務を義務付けるのはかなり強硬な対応に思われます。すでに広告をだすことを回避する企業が増えていますが、ツイッターと取引を避ける企業も増えると思います。テスラはEVの開発生産で世界をリードしていますが労務管理で問題が露呈していますし、マスク氏がどこへ向かおうとしているのか懸念を感じています。

 

 

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