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PayPayなどスマホ決済躍進 コロナ下で利用多いアプリ
 
 

新型コロナウイルス下でスマホアプリの勢力図はどう変化したか。2021年度の利用者数をランキングすると、「PayPay(ペイペイ)」や「d払い」などの決済サービスが19年度から順位を上げた。「フェイスブック」が順位を下げ、対話アプリの「LINE」も利用者数が減るなどコミュニケーションツールの人気の変化も見えてきた。

データ分析のヴァリューズ(東京・港)の調査を基に、21年度の利用者数と、年代別(20代〜60代)の19年度からの増加率のランキングをつくった。
21年度の利用者数で2位になったのが、QRコード決済最大手のペイペイだった。19年度(9位)から4割近く利用者を増やした。18年度に100億円を還元するなど大型キャンペーンを相次ぎ打ち出し、利用者を大きく増やしていた。

キャンペーン終了後も利用者が離れず、コロナ下で利用を伸ばした。楽天グループの「楽天ペイ」やNTTドコモのd払いも順位を上げた。

日本は現金決済の比率が高かったが、コロナを機に決済のトレンドが変わってきた。電子商取引(EC)の利用が増え、店舗でも非接触で支払いたいニーズが高まったためとみられる。

調査会社のインテージ(東京・千代田)の消費者調査によると、QRコードなどのスマホ決済をした回数のシェアはペイペイが5割を超える。楽天ペイやd払い、「auペイ」なども1割強で拮抗する。

ペイペイは18年10月にサービスを始めた。中小店舗の手数料を21年9月まで3年間無料にし、利用できる店を増やした。auペイも中小規模の加盟店を9月末まで無料に、d払いは新規加盟店を9月末まで無料にするなどしている。

ペイペイは21年10月に加盟店から得る決済手数料を有料にした。各社は赤字覚悟で市場拡大に努めてきたが、収益化の段階に入ると淘汰が進む可能性がある。

LINEは変わらず首位だが、19年度から利用者数が約2%減った。フェイスブックも5位から10位に順位を下げた。コロナ下でオンライン対話は増えたが、ツール間の競争が厳しくなった。

3位に入ったSNS(交流サイト)の「インスタグラム」(19年度は6位)や「ツイッター」のメッセージ機能でやりとりする人も多い。LINEは21年3月、国内利用者の個人データを中国の関連会社からアクセスできる状態にしていたことが発覚した。情報管理体制について利用者の不安を招いた可能性もある。

年代別の増加率上位をみると、コロナ下の生活変化を示すアプリが目立つ。

米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのビデオ会議サービス「ズーム」は代表格といえる。外出自粛時のコミュニケーション手段として定着し、20代で19年度の11倍超になった。

無料で簡単なため就活での利用も多く、20代で首位だった。在宅勤務の会議手段として定着し、離れた友人と飲食を楽しむ「ズーム飲み」もはやった。

料理宅配サービスも単身者の多い20代で伸びた。「ウーバーイーツ」は2倍以上になり、2位だった。スマホで注文や決済ができ、配達員の位置を把握できる利便性が支持を広げた。

60代でフリマアプリ「メルカリ」がコロナ前から7割近く伸びた。新型コロナで外出できない時間を利用したり、子どもの独立を契機にしたりして、家財を整理しながら小遣いを得られる点が受けたようだ。

メルカリで「生前整理」と検索すると、骨董品や時計、アクセサリーが並ぶ。メルカリは主にシニアを想定し、アプリ登録から出品の仕方まで無料で教える「メルカリ教室」を始めた。

40代の増加率で首位の「マイナポイント」は、マイナンバーカードを取得したり交付申請したりした人が電子マネーを得られる。決済サービスで利用した金額の25%(上限5000円分)のポイントが還元されるため、利用が広がった。

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ポイ活で「お得」を追求

ポイント還元関連のアプリのランキング上昇が目立つ。お得な情報を探し、ポイントを効率的にためる「ポイント活動」(略して「ポイ活」)をする人が増えている。新型コロナウイルス下の外出自粛や物価上昇で、家計の厳しさをすこしでも和らげようとしているようだ。

野村総合研究所の推計によると、2020年度に国内で発行された民間のポイント・マイレージは少なく見積もっても1兆399億円あった。21年度以降も増える見通しで、25年度は1兆3000億円を超えると予測する。

大和総研の神田慶司シニアエコノミストは「新型コロナ禍からの回復で、旅行など大型消費が広がっている」とする。「ウクライナ情勢や資源高などを背景に、飲食料品など抑えられるところは節約する。メリハリのある消費行動が目立つ」という。

野村総研は携帯電話や電子商取引(EC)の利用に伴うポイント発行が増えると予想する。各社は顧客基盤を広げるため、ポイント「経済圏」を広げている。MM総研(東京・港)によると、自分の携帯キャリアのポイントを利用していると答えた人は楽天モバイルが7割超、ソフトバンクやドコモは約3割だった。

楽天グループは新携帯料金プランの発表に合わせて「楽天ポイント」の還元や、ECの「楽天市場」利用で還元率が増えるキャンペーンを発表した。ポイントの利用者にお得感を打ち出し、携帯の契約につなげたい狙いとみられる。

 

 

村上臣
グーグル合同会社 検索チームゼネラルマネージャー
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別の視点長年メッセージアプリの王者として君臨してきたLINEが減少し、20代・50代・60代で+メッセージが急速に伸びてきているのが興味深いです。記事でも指摘されているような情報管理体制への不安から、各キャリアが公式として提供している+メッセージが好感されたのか、または別の動きが出ているのか。興味関心軸でつながるTwitterやInstagramのDM機能もよく使われている一方で、リアルなつながりでのメッセージを担うサービスに新たな潮流が生まれ始めているのかもしれません。

 

山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
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別の視点利用率や順位の変化をみてみると、通勤・通学時に多く利用されていたであろうアプリが下がっているように見えます。最近、コロナ前に戻ったかのように感じる通勤ラッシュをよく体験します。完全にもとの利用率や順位に戻るのではなく、うまくユーザを捕まえ直すものとそうでないものが出てくるのではと感じています。2022年の動向がどの様に出ているのか、分析が待たれます。

 

 

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