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アジアのヒット2021 中国「華流」、韓国「イカゲーム」
中国ではスポーツ用品や化粧品など幅広い分野で自国ブランドが開花した
日本経済新聞社はアジア11カ国・地域を対象に、2021年に人気となった商品やサービスをまとめた。新型コロナウイルスの感染拡大から2年目も渡航制限が続くなか、自国を見つめ直す機運が高まり、近場の観光や国産品といった「地元消費」の芽が育った。中国は化粧品などで「華流」ブランドが開花し、韓国ではネット配信ドラマ「イカゲーム」が大ヒットした。
マレーシア屈指のビーチリゾート、ランカウイ島。新型コロナに伴う渡航制限で外国人観光客の訪問は途絶え、ホテルや観光名所では閑古鳥が鳴く状況が続いていた。
危機に陥った島の「救世主」となったのが地元客だ。9月中旬からワクチン接種済みの国内旅行者を対象に受け入れを始めたところ、最初の1カ月間で9万人近くが訪問。地元経済は急速に息を吹き返した。
所得水準の向上に伴い、海外旅行熱が高まっていたアジア各国。そのさなかの20年に新型コロナの世界的な流行が起きた。各国政府は都市封鎖(ロックダウン)に踏み切ったほか、海外渡航だけでなく、自宅からの外出にも大きな制限をかけた。
21年に入ってからは、ワクチン接種率の上昇を受け、徐々に制限が緩和された。海外往来ではシンガポールが9月から入国規制を段階的に緩め、タイは11月からワクチン接種済みを条件に、低リスク国から隔離なしの入国を認めた。それでも、コロナ前のような自由な行き来は難しく、多くの人は自国にとどまるしかなかった。
そんな状況下で脚光を浴びたのが、地元での旅行やレジャーだ。シンガポールではサーファーたちが地元の海に繰り出し、風に乗ってボードを繰る「ウイングフォイル」が流行した。台湾でも「台湾一周・自転車旅行」企画が人気を集め、総距離910キロメートルを8泊9日で走破する2万7600台湾ドル(約11万円)のプランなどが相次いだ。
21年のアジア11カ国・地域のヒット商品・サービスをみると、自宅や国内にいる時間が長くなったことで自国の良さを再認識するとともに、コロナでたまったストレス発散に向けて非日常な体験もしたい、という欲求が各地で高まったことがうかがえる。
国産ブランドを支持する動きはその一つだ。中国ではワインや化粧品、スポーツアパレルといった様々な分野で独自ブランドが人気を集めた。乗用車の新車販売台数でも、ドイツや日本が落ち込む一方、中国ブランドの人気が高まったことで足元のシェアは5割に迫る。マレーシアでは自国メーカーが醸造したウイスキー「ティマ」が、米国の国際大会で銀賞を獲得したのを機に知名度を高めた。
韓国ドラマ「イカゲーム」は世界的なヒットとなった=ネットフリックス提供
自宅などで楽しめるデジタル関連消費も引き続き堅調だった。米ネットフリックスで9月から世界配信された韓国ドラマ「イカゲーム」は、28日間で1億4200万世帯が視聴。韓国だけでなく欧米やアジアで幅広く人気が広がり、これまでのネトフリの最多記録の約2倍の視聴者数を獲得する大ヒットとなった。
21年は東京五輪が開催されたことで、スポーツ関連消費も盛り上がった。フィリピンでは自国選手の活躍を受け、首都マニラのビジネス街などで多くの若者がスケートボードに夢中になった。タイでもスケボーや、一回り大きい「サーフスケート」の専用広場が相次ぎ開設され、「再入荷まで数カ月待ち」というブランドもある。
「カーボンゼロ」が話題となったことで、車などの電動化の波も広がった。インドネシアではジョコ大統領が脱炭素の政策を矢継ぎ早に打ち出し、電動車の販売台数は21年上半期だけで20年通年を上回った。中国でも電気自動車(EV)など新エネルギー車の販売台数が前年比3倍近いペースで伸び、インドでは電動スクーターの販売が増えるなど関連市場が立ち上がり始めた。