縦割り打破 野党とも連携 菅前首相インタビュー
脱炭素やデジタル柱に 政策実現、一定のかたまり必要
インタビューに答える菅前首相
菅義偉前首相は日本経済新聞のインタビューで1年の政権運営を振り返った。行政の縦割り打破に向けて野党を含めて連携する考えを示した。重要な政策課題に脱炭素、デジタル、少子化、地方活性の4つをあげた。主なやりとりは以下の通り。
――岸田政権の発足から2カ月がたちました。
「まだ始まったばかりだ。慎重に安定的に進めているのではないか」
維新、明確に行革掲げている
――衆院選で日本維新の会が躍進しました。
「維新は明確に行政改革などを掲げている。反対のための反対でなく是々非々だ。自民党と建設的な方向で連携を進めた方がいい」
――政策実行の先頭に立つ考えはありますか。
「骨太の方針に脱炭素、デジタル、少子化、地方活性の4つの成長戦略の柱をつくった。どういう内閣になっても将来的に日本にとって極めて大事だ」
「縦割り打破は大きな柱だ。ダムの事前放流や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のポートフォリオ(資産構成割合)変更をやった。こうしたことはまだまだある。もう少し探して是正できるように取り組みたい」
――派閥の結成には慎重ですか。
「政策を引っ張りだして『こういうのをやろう』というほうがいい。仲間の緩やかな連携をやりたい。党の部会で発言しなければいけないので、一定のかたまりが必要だ」
早期解散、やるべきでなかった
――早期に解散しておけばよかったですか。
「それはない。いろいろ考えたが緊急事態宣言で目いっぱいの状況のなかで、やるべきではないと思っていた」
「『新型コロナを最優先にしてやる』といっていたのでこの時か、この時か、と考えたが、宣言を延長するという状況になり難しくなった」
――9月中旬に解散という報道もありました。
「記者会見で『選択肢のひとつだった』といったが、9月12日の宣言を延長せざるをえないようだったら、やるべきじゃないという考えはずっとあった」
――8月に二階俊博幹事長と会談しました。
「二階さんは『何をしても応援するから、遠慮しないでやりたいことをやれ』ということだった。解散も含めてやれば何でも応援するという趣旨だった。たいしたものだと思った」
――夏の東京五輪・パラリンピックで延期の選択肢は。
「延期はすべきじゃないと言っていた。選手は一回延期するだけでも大変な思いをしている。再延期してコロナが収束するのが明確だったら別だが、そこは不確定要素として残る」
ワクチンは国際化を
――ワクチンは海外から2カ月遅れました。
「海外では例えばファイザーならファイザーの臨床試験(治験)結果を使って承認している。日本は『西洋と日本人は違う』といって、国内で治験をした。日本も治験に入れてもらうなどの体制が必要だ」
――厚労省分割などを提起しました。
「落ち着いてから検証したほうがいい。ワクチンの治験は政治の指示で動くのではない。客観的な行政の手続きが必要になる」
――国際化が遅れていましたか。
「そうだ。海外であれだけワクチンを打っていたにもかかわらず、日本は安心・安全があまりにも優先されすぎてしまっている」
――緊急事態宣言の改善点はありますか。
「国と地方の関係の問題がある。法的権限が極めて曖昧だ。権限を明確にして国に集中したほうがいい。国と地方、あるいは政令指定都市、特別区とものすごく難しい状況になっている」
――専門家との関係にも苦労しました。
「専門家の意見を聞くのは当然だが、あまりにも人数が多すぎる。五輪も反対していたが、反対をうけて五輪をやめたらどうだったのか。対策は厳しくしておいたほうがいいにはいいが、どれだけ効果があるか判断しなければいけない」
――官庁の動きが鈍かったように見えました。
「日本の省庁は縦割りだ。役所では目標を立てられない。役所の人は常に責任を考える。所掌もある」
――東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出など痛みを伴う政策も動かしました。
「私が思ったより反対はなかった。処理水や防衛上重要な土地利用の法整備などは避けて通ることはできない。最初から二階さんにデジタル庁と国民投票法、重要土地利用法をお願いしていた。だから一挙にできた」
高島宏平
オイシックス・ラ・大地 代表取締役社長
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分析・考察かなりビハインドな状態から先進国トップレベルのワクチン接種率まで持っていき、私達が比較的穏やかな年末を迎えられているのも、菅政権のワクチン行政の成功に負うところが大きいです。時に強引と言われるようなリーダーシップを使う菅さんでさえ感じた、有事のガバナンスについては、いつ来るかわからない次の有事に備えて早急な見直しを期待します。一方で、平時の意思決定は今のスピード感で良いのかというと全くそうではなく、デジタル時代に合わせ政策や行政も素早いPDCAを回せるようになる必要があり、併せて平時も含めたこれからのガバナンスの体制づくりが必要です。それがないと「誰がやっても勝てない」状態が続いてしまいます。