政界Zoom

 

新人議員、私の日本改革論

 

 

衆院選(10月31日投開票)で厳しい選挙戦を勝ち抜き97人の新人議員が初当選した。経歴はさまざまな97人はそれぞれの人生経験を生かして政治活動に臨む。自民党、立憲民主党、日本維新の会の新人議員にいまの政治に持つ問題意識と、日本をどう変えたいのかをそれぞれ聞いた。

 

危機に強く成長する国 自民党・塩崎彰久氏

愛媛1区。弁護士などを務めた

新型コロナウイルスで暮らしが一変した。パンデミック(世界的大流行)が起こる可能性がありながら十分な備えができていなかったところに日本の構造的な問題が凝縮されていると感じた。

日本の競争力や人口がそがれていくなかで社会保障や医療の制度が残るのか不安に思った。危機に強く成長し続ける日本をつくりたい。主に2つの分野から取り組みたい。

一つが社会保障政策だ。2040年あたりで医療費が今の何倍に跳ね上がるかもしれない。どうすれば医療制度を持続可能なものとして次の世代に引き継いでいけるのかを考え対策をとりたい。

もう一つが経済政策だ。1人当たりの国内総生産(GDP)がなぜ他国と比べて落ちているのか。まだまだ改善、成長の余地がある。

欧州連合(EU)は個人情報保護の規則などでルールを作り世界をリードしている。日本も戦略的にルールを形成する側にまわり米国や中国を巻き込むことが大事だ。

国の借金は減らさなければならないと訴えながら今年の予算はたくさん欲しいと思ってしまう。問題を先送りする傾向を脱しなければいけないタイミングがきている。

選挙期間中も若い人に投票に行ってほしいと言い続けてきた。これが政治力学を変える。若者の投票率が上がれば若者に政治の目線が向く。問題を先送りする考え方を、政治家だけではなく有権者も一緒になって変えていきたい。

学生との意見交換で伝えてきたのは「怒れ」ということ。コロナ禍で学生は通学できずサークルにも参加できず大切な時間を台無しにされた。

弁護士としてスタートアップの支援などに携わってきた。弁護士が裁判で白黒をつけることはそんなにない。話し合いで合意点を見つけ関係者の納得を得る解決策を模索していくことが多い。

政治の立場で社会の仕組みを変えたいと思い立候補した。弁護士として交渉してきた経験を政治の世界で生かしたい。

 

外交・安保政策、現実的に 立憲民主党・太栄志氏

神奈川13区。米戦略国際問題研究所研究員などを務めた

日本を安全保障や感染症の脅威から守る体制づくりを強化していきたい。外交・安全保障が重要になる。

米国のヴァンダービルト大学の客員研究員や米戦略国際問題研究所(CSIS)の研究員を経験した。そのころ一緒に働いていた米国人の同僚に言われたのが「日本人は変わろうとしない」ということだった。

米国に言われたことを守っていくだけでは発展がない。同盟を維持するために努力し続ける一方で過度の依存はやめなければならない。おかしいことはおかしいと言える関係にならないと中国の脅威などの国際情勢のなかで日本が生き残れない。

日米地位協定については見直しが必要だと考える。新型コロナウイルス禍で問題になったのが、米軍基地内の情報をなかなか開示してもらえなかったことだ。

米軍の感染状況などを教えてもらえず地方自治体は苦労した。一つ一つ変えていくことが重要だ。神奈川13区から立候補したのは米軍のキャンプ座間などがあるためだ。基地のある街から対米関係を再考すべく力になりたい。

新型コロナで政治が国民の命や生活を守っていくことができないと明らかになった。今の政権が問題というわけではなく構造的に有事に対して機能できていない。危機管理体制を強化すべきだ。国の安全保障体制を強化することにもつながる。

米国には自然災害や感染症に備えた緊急事態管理庁が存在する。日本は責任の所在がわからない。日本にも組織をつくって危機に強い国に変えていきたい。

立憲民主党から立候補したのは党の外交・安全保障政策を強化するためでもある。旧民主党政権の一番の問題は沖縄の基地問題も含めた外交・安全保障政策だったと思う。

定期的な政権交代は必要だ。現実的な外交・安保政策を持ち有権者に安心感をもってもらいたい。野党第1党の立民を変えることで国を変えられると信じている。

私の強みは国際性だ。海外で学び働いた経験から安全保障関係のネットワークがある。

 

大胆な規制緩和を 日本維新の会・小野泰輔氏

比例東京ブロック。熊本県副知事などを務めた

熊本県の副知事を経験し国の規制や省庁の指導といったがんじがらめの制度に直面した。経済が成長しない失われた30年が続いたのは政治の責任が大きい。改革を進めて日本で挑戦したいと思っている人たちを後押ししたい。

副知事時代に県のキャラクター「くまモン」を手がけた。関連商品の売上高は1兆円にのぼるなど実績を残した。

ただ、国の定める規制や法律の壁を地方自治体はこえられない。直接変えていかないと日本の発展は望めないと思い立候補した。

例えば熊本県の八代市に五家荘という人口数百人程度の地域がある。都市部のように路線バスを走らせると大赤字になる。

そこで住民が有償で住民の自家用車に乗り合えればいいのではないかと考えた。自家用車に有償で住民を乗せる「白タク」の規制が障壁となった。

タクシー会社が営業を続ける上で規制にも合理性はあるのだろう。全廃せよとは言わない。ただ中山間地域のように本当に必要なところでは大胆な規制緩和が必要だ。住民目線に立って地域ごとに柔軟な改革を進めるべきだ。

議員として政策を提言し議員立法などにつなげたい。個人的に今後提起したいのは高速道路の料金の定額化だ。

例えば熊本や鹿児島のような市場から遠い地域だと農産物の輸送にコストがかかる。定額にするだけで経済が活性化する余地が出る。出口での料金の収受の手間も省ける。

改革だけではなく仕組みの工夫で生産性を上げ無駄をなくす政策的なイノベーション(技術革新)にも取り組んでいきたい。意見交換や議論を通じて日本維新の会としての政策にしていければと思う。

10月31日に当選して1日しか議員として在籍していないのに10月分の文書通信交通滞在費の100万円は満額支給になった。さっそく問題提起した。経験を生かして国民の声を聞き論争を挑んでいく。

 

記者の目 当選重ねて政策実現へ

今回の衆院選で2017年の前回よりも41人多い97人の新人が当選した。自民党の石原伸晃元幹事長ら大物議員が落選し世代交代が目立った。

新人議員は2回、3回と当選を重ねる必要がある。多くの有権者との対話は民主主義の基本ともいえる。政策を実現するための権力を得るにはある程度の当選回数が必要なのは厳然たる事実だ。

政党という組織で居場所を得るにはビジネスの場と同様に下積みが欠かせない。その間に絶えず政策を磨くことも大事だろう。

22年夏には参院選がある。自民党は単独で絶対安定多数を獲得したが参院選も勝ちきれるとは限らない。野党第1党の立憲民主党は代表選が始まった。日本維新の会は衆院で第3党に躍進した。政治状況次第では衆院議員の2割超の新人の動向が影響を与える。

 

 

 

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