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海面上昇どうして? 水の膨らみと氷のせいだよ

 

 

南極・ブライド湾の棚氷(国立極地研究所提供)

地球温暖化が進むとだんだん海面が高くなっていき、太平洋の島が沈んでしまうかもしれない、とニュースで言っていたよ。日本の砂浜や干潟にも影響が出るかもしれないんだって。どうして海面の高さが変わるのかな。
地球の気温は上がり続けている。科学者たちの最新の報告だと、人類が工場で生産したり、車に乗ったりする影響で温暖化が起きていることには「疑う余地がない」そうだ。2011年〜20年ごろの世界の平均気温は、産業革命前と比べてセ氏1.1度高くなっているんだ。

人類は電力などのエネルギーを得るために石油を燃やしていて、その際に二酸化炭素(CO2)が空気中に出されている。CO2には太陽から届いた熱エネルギーを地球の外に逃がさないようにする性質があるから、気温が上がるんだ。湿地などから出る「メタン」という物質もこの性質を持っている。

この影響で、1901年から2018年に世界の海面の高さは平均で約0.2メートル上がった。最近では上がるスピードが速くなっていて、2100年までに近年より約0.3〜1メートル上がると考えられている。

海面が上がる原因は主に2つあるんだよ。1つは水温が上がって海水がふくらむこと、もう1つは氷河や南極大陸の氷などが海に流れ込むことだ。

海水がふくらむってイメージしにくいかな。実は物には温度が上がるとふくらむ性質があるんだ。気球は空気をあたためてふくらませ、中の空気を軽くして浮く仕組みだね。水は空気ほどではないけれども、それでも多少はふくらむ。気温上昇で海の水温も上がった結果、海水がふくらんで海面を押し上げているんだ。これまでの海面上昇した分の5割は、海水がふくらんだためと分析されている。実は影響が一番大きいんだ。

CO2が増えると、北極域や陸上の寒い地域は他に比べて気温が上がりやすい。このため、高い山の谷などにできた氷河や極地の氷が解けた水が川などを通じて海に流れ込み、海面を上昇させているんだ。

スイスアルプスの山岳氷河(国立極地研究所、三浦英樹氏提供)

氷河と南極の氷では、氷河の方が海面上昇に大きく影響しているとされている。大きな氷河のある代表的な地域は、南米のパタゴニアやアジアのヒマラヤ山脈などだ。

北極海の氷は海に浮かんでいるので、解けても海面の高さには影響しない。水をコップのふちまで注ぎ、氷を入れてみよう。水が少しあふれて、水上に氷の一部が見える。北極の氷はこの状態だ。しばらくして氷が解けても、これ以上水面が上がって水があふれることはないよね。

急速に海氷が融解する夏の北極海(国立極地研究所提供)

南極は北極と違い、南極大陸という陸の上に氷が乗っている。この氷の厚さは平均約2500メートル、一番厚くて4000メートル以上もある。富士山よりも高い巨大な氷の塊なんだ。南極の氷が全て解けてしまうと、現在より海面が40メートル以上も上がると考えられている。

南極大陸の上の氷が解けて海に流れ込むと氷河と同じように海面の上昇につながるね。でも陸の上にない「棚氷」も海面上昇に関わるんだ。

棚氷は陸にあった氷が押し出され海まで伸びている部分。陸の上に氷を押しとどめる車止めのような役割を果たしている。棚氷が割れると大陸上の巨大な氷の塊が海に流れ出て、海面を大幅に上げる可能性がある。

近年いくつかの棚氷が割れた例もみられる。棚氷が不安定になる原因は、南極を取り巻く海流にあることが最近の研究から分かってきている。暖かい海流が棚氷の下に入り込み、解かして薄くし、壊れやすくしているとみられているんだ。

南極の氷の量の変化には注目が集まっている。直接測るのは大変なので、人工衛星を使った観測が進んでいる。米航空宇宙局(NASA)などのプロジェクトで、2つの衛星を同じコースで飛ばし、その間の距離を測っている。普通なら距離はいつも同じだけど、地表に山や南極の氷など大きなものがあると、前を飛んでいる衛星が地球の重力に引っ張られて加速し、距離が広がる。その変化から地表のものの重さや量が分かるんだ。

02年に観測を始めてから、南極の氷の量は全体として減り続けている。環境が大きく変わると、そこにすむ生き物への影響も心配だ。でもみんなで温暖化の対策を進めれば、氷の減少を止められるかもしれない。

(国立極地研究所の奥野淳一助教に取材しました)

 

感染症への影響も

地球温暖化による気候変動は世界的な問題だ。世界中の専門家が集まって研究し、将来の影響を予測して報告している。8月の最新報告では、21〜40年の平均気温は産業革命前と比べ1.5度高くなるという。これまでは同水準への到達は30〜52年とされていた。

1.5度は世界平均で、日本はさらに暑くなると予想される。気候が極端になり、海面上昇以外にも猛暑や豪雨といった災害の増加も心配されている。

温暖化で一部の感染症が広がりやすくなる可能性もある。蚊の一部はデング熱などを広げるからだ。温暖化で蚊がいる時期が長くなり、生息地域が広がると、流行の危険が高まると考えられている。

2100年ごろの気温は、最悪の場合では約4.4度上がるけれど、CO2の量を減らせば約1.4度の上昇に抑えられるという。一人ひとりが地球温暖化についてよく知って考え、行動を起こしていく必要がある。

 

 

 

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