全米敗退の大坂、復調の道険し シャラポワさんが助言

 

 

 

「のっている」ときの大坂は体のキレなどに問題はないのだが…=USA TODAY

テニスの全米オープン連覇を断たれ、大坂なおみ(日清食品)は「何をしたいのか見極めたい。いつ大会に戻るか分からない」という言葉とともにニューヨークを後にした。メンタルの問題を理由に5月開幕の全仏オープン2回戦を棄権した後、東京五輪、全米前哨戦、全米とすべて3回戦で初対戦の相手に負けた。

「いいプレーができなかった。全然、動きがよくなかった」。3日、全米でレイラ・フェルナンデス(カナダ)に敗れた後の弁。「試合が思ったように進まないと、不安になる。我慢の限界を超える」。ボールを客席に打ち込むなどの乱暴なふるまいをわびた。

今回の全米は選手の心身をサポートする制度が導入され、セラピストらが常駐するようになった。だが、東京五輪でもいら立ちをあらわにする場面があった大坂は、こうした一時的な対処では回復しそうにない。

全米3回戦では思ったプレーができず、タオルで顔を覆い集中しようと試みていた=USA TODAY

全米前哨戦の記者会見でも感情を乱された。「記者会見で記者と接するのが好きでないのに、いろんなメディアのプラットフォームを使って、テニス以外に興味のあることをたくさん発信している。両者のバランスをどうとるのか?」と聞かれたときのこと。

「若い頃から多くのメディアに注目された。私のプレーやルーツの関係もあるだろうけど、私がテニス選手だからだ。私の発言、ツイートから記事がつくり出されていく。四大大会を何度か勝ち、記者会見の機会も多いからそうなると思う。両者のバランス……。どうすればいいか分からない」。ここで泣き出して、一時退席となった。

この一件について専門記者は「攻撃的なトーン(の質問)」と批判し、大坂のエージェントは「これはいじめ」とコメントを残している。

大坂自身は記者会見とSNS(交流サイト)での発信に折り合いをつけないといけないと思っているのだろう。その後の記者会見で「なんで会見に出たくないと思うのか、ずっと考えている」と切り出し、全米で似た質問が出たときも「ファッション関連の仕事はワクワクする体験、記者会見は昔からやってきたので慣れがあるというか。2つは別もの」と説明した。

昨年、BLM(黒人の命も大事だ)活動に関わって以降、大坂の発信力はスポーツ界を超えて反響を呼びつつある。スポンサーやビジネス面の協業の申し出が舞い込み、テニス以外の分野での発言も期待され、本人もそれに応じてきた。

唐突な全仏開幕直前の記者会見拒否宣言の後、大坂は「どれほど大きな問題になるか、分かっていなかった」と反省した。「今を生きるというか、感じたままを口にし、行動するタイプ」と自己分析する直情的な性格が引き起こした騒動だったが、コートの外ではその後も積極的な行動を続けている。

様々な雑誌の表紙を飾り、タイアップ製品、企画が発表された。全米前も前哨戦の賞金をハイチ地震の復興支援に寄付すると表明し、自ら改修費を出したニューヨーク市内のコートで子供と触れ合い、敗退直後にはスキンケアブランドと共同開発した商品を発表した。驚異的な行動力だった。

9月のベネチア国際映画祭に姿を見せたシャラポワさん=AP

そんな大坂について最近、四大大会5勝のマリア・シャラポワさんが海外メディアにコメントを寄せた。現役時代は「最も稼ぐ女性アスリート」として知られ、ドーピング違反に対する出場停止処分と周囲の批判を経験し、記者会見で婚約破棄などのプライベートに関する質問にも答えてきた猛者だ。

「まず、なおみや(弱った状況にある)選手の決断を尊重すべきだ」としたうえで、大坂に対しては「つらいときでもプロとして記者会見に出て、試合について語らなければ」とアドバイス。SNSの興隆でテニス以外についての質問も増えているため「一定のルールは必要」としつつも「自分にとっては嫌な質問も、他の選手は平気なこともある。何が自分にとってベストか理解し、キャリア形成に主導権を持たなければ。今の時代にとても大切なことで、選手たちはできると思う」と結んだ。

現役時代のシャラポワさんは、いらだつ質問への切り返し、皮肉の利かせ方も際立っていて、聞いた側が何も言えなくなることも少なくなかった。コート上だけでなく、コート外でも状況をコントロールする力にたけていた。

今秋も、大坂の好きなアジアの大会が新型コロナウイルス禍で軒並みキャンセルに。3月から10月に延期になったBNPパリバ・オープンへの出場を表明しているが、さてどうなるか……。

 

 

 

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