明日への話題

 

日中韓、教育の違い

 

伊藤忠商事会長CEO 岡藤正広

 

中国の友人がおもしろいことを言っていた。中国人は小さい頃から「人にだまされるな」と教えられるという。これが韓国では「人に負けるな」になる。一方、日本では「人に迷惑をかけるな」。日中韓では教育の前提が違うという。やや極端で異論もあるだろうが、私の仕事の経験を振り返れば言い得て妙だなと思わされた。

中国人の商魂のしたたかさは「だまされまい」と他人の言動を客観視できることと無縁ではあるまい。韓国人のたくましさの裏には徹底した競争意識がある。このような意識は勝負事の最後のところで差をつける。ゴルフやサッカーの試合でも、ここぞという時の彼ら彼女らの強さは多くの人が目の当たりにしてきたことだろう。

「負けたくない」「だまされてなるものか」という意識が競争原理をもたらし人類の進歩を促してきたことも事実だろう。「迷惑をかけるな」の精神も尊ぶべきだが、それが競争を放棄する風潮につながるのなら話は違ってくる。

なにも中韓に限った話ではない。私の経験で言えば、欧州のブランドオーナーも商談が9割ほど終わってホッとするタイミングで突然、無理難題を言い出すことが多かった。なんのことはない。最初から交渉のストーリーに組み込まれているのだ。世界を相手にする商談はきれい事だけではすまない。常に競争という要素が存在する。性善説だけでは戦えないのだ。

真のグローバル人材とは英語を話せるだけではない。相手の歴史や文化、メンタリティーを理解した上で堂々と戦える人のことを言う。厳しい話だが、それが現実だ。

 

 

 

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