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ウイルス最長で28日残存 紙幣やスマホにご注意を
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)を引き起こすウイルスSars-Cov-2が、紙幣やスマートフォンの画面など日常的に使用する物の表面で、最長28日間とこれまで考えられていたよりもはるかに長く残存するとの研究結果を、オーストラリア国立科学機関の研究チームが発表した。
オーストラリアの科学機関の研究では、新型コロナウイルスは紙幣の表面に最長1カ月近く残存するという=ロイター
オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の研究によるもので、低温の環境ではウイルスの残存期間が延びるとしている。またガラスやステンレスなど無孔質素材の表面での残存期間の方が、木綿など多孔質素材の表面よりも長かった。
■「考えているよりも長く」感染力保つ
12日に科学誌バイロロジー・ジャーナルに掲載された。研究チームは、ウイルスは「一般に考えられているよりもはるかに長い間」物の表面で感染力を保つため、ウイルスの拡散防止のために清潔さを保つ必要がより強まると話している。
「我々は引き続き手を洗い、ドアノブや食器用刃物、ATMなど日常で使うものの表面を消毒する必要がある」と、研究を率いたCSIRO傘下の豪疾病予防センター(ACDP)のトレバー・ドリュー所長は話した。
一方で同氏は研究が「最悪のシナリオ」の下で行われたため、ウイルスが残存し感染力を保つ期間が延びた可能性があると指摘した。研究は殺菌効果がある紫外線の影響を避けるため暗い環境で行われ、多量のウイルスが使用されたと同氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に話した。
4月に英医学誌ランセットに掲載された別の研究では違う手法が用いられたが、ウイルスの残存期間はガラスや紙幣の表面で4日、ステンレスの表面では7日だった。
いずれにせよCSIROの研究は消毒方法について重要なデータを提供し、様々な物の表面や輸入品がもたらす感染リスクを明らかにした。8月にはニュージーランドの研究者が、輸入冷凍貨物が新型コロナウイルス感染症の流行に関係している可能性を指摘している。
■低温も感染拡大のリスクに
低温の環境でウイルスの生存期間が延びることが冬に感染症の流行リスクが高まる理由の一つかもしれないとドリュー氏は話した。
今回の研究ではセ氏20度、30度、40度の環境で様々な物の表面に付着したウイルスがどのくらい長く残存するか、感染者が放出する最大量とほぼ同量のウイルスを用いて調べた。
ウイルスは20度の環境ではガラス、ステンレス、紙やポリマー紙幣の表面で最長28日間残存した。しかし40度の環境では、一部の表面での残存期間は24時間以下だった。
「室温に近い20度の環境ではウイルスは非常に活発で、スマホの画面に使われるガラスやポリマー紙幣など滑らかな表面の上では28日間残存することができるとわかった」とACDPのデビー・イーグルス副所長は話す。
「比較のために言うと、実験ではインフルエンザA型のウイルスは物の表面上で17日間残存した。新型コロナウイルスがいかに強靱(きょうじん)かがわかる」