自民・甘利氏「学術会議、政府から独立を」

 

 

 

インタビューに答える自民党の甘利氏(9日、東京都千代田区)

自民党ルール形成戦略議員連盟の甘利明会長は日本経済新聞のインタビューで、日本学術会議を政府から独立させるべきだと表明した。海外との共同研究に伴う先端技術流出へのリスク管理が不十分と指摘した。中国を念頭に外国からの支援の情報開示を義務付ける法整備も求めた。

 

――菅義偉首相は学術会議が推薦する会員を任命しませんでした。

 

「首相は任命権者で、国会と国民に任命責任を負う。責任を負うのだから裁量があっていい。極めて論理的で、問題にすることが間違っている」

 

――学問の自由を脅かすとの批判もあります。

「政府は研究者個人の研究に全く制約をかけていない。学術会議は公的な団体で政府のシンクタンク機能が期待される。国益に沿った存在でいてもらいたいから国が予算を拠出している。期待に十分応えているかを自問してほしい」

「学術会議の会員の身分が特別職国家公務員である以上、公に奉仕するのが前提になる。全くの私人になりたかったら政府の補助から独立し、自力で運営すべきだ」

 

――米欧の組織は政府から独立しています。

「海外は具体的な委託契約で研究費を出すのが一般的な形態だ。日本も国際標準にしていくべきではないか」

 

――安全保障関連の研究をどう考えますか。

「学術会議は姿勢が一貫していない。日本の防衛技術研究に参加しない声明を出す一方、中国など海外の軍事技術につながる研究は制御していない。日本の国民を守る技術研究に拒絶反応を示しつつ、リスクになるものは黙認していると受け止められても仕方がない」

「現代は民生技術と軍事技術の境界線がなくなっている。中国共産党は『軍民融合』を掲げ民間技術者は軍事の技術者と同等との意識を持って取り組むよう宣言した」

 

――日本の先端技術が流出する事態をどう防ぎますか。

「外国の軍事技術に流用されるリスクに極めて慎重に対応してほしい。米国では外国から資金提供される研究に情報開示を求める。米ハーバード大の教授は中国の人材獲得計画に協力していた事実を隠して米政府補助金を受け取り、虚偽陳述の罪で起訴されている」

「日本も政府が資金を出す研究が外国の企業や政府から支援を受けたら国に開示を義務付ける方向で法整備しなければならない。外国との関わりを明確にすべきだ」

 

――外国との共同研究はどうあるべきですか。

「学術会議は中国科学技術協会と研究者の交流などで協力する覚書を結んでいる。なぜ日本の安全保障研究を拒否し外国の防衛研究につながりかねないものに理解を示しているのか説明してほしい。日本のリスクになるような研究に協力し、日本を守る研究に参加しないのは理屈が通らない」

 

――新型コロナウイルスに関する学術会議の活動をどう評価しますか。

「各国のアカデミアは積極的に提言し政府に適切にアドバイスした。自民党内で『学術会議は何をしている』と問題視する声が上がった。7月に提言を出したが、十分な活動とはいえない」

 

――政府や自民党は学術会議の組織のあり方の検討を始めます。

「公正な運営に努めてほしい。これまでは正面からぶつかる議論を避けてきた。学問の自由とはなんぞやという話だ」

 

 

■学術会議「首相に任命拒否権なし」「学問の自由に反する」

 日本学術会議は会員候補6人の任命を菅義偉首相が拒否する権利はないと指摘し、憲法で保障される「学問の自由」に反すると主張する。任命拒否の理由説明と速やかな任命を求める要望書を内閣府に提出した。

 同会議は会員候補105人を推薦したが、首相が任命したのは99人だった。大西隆・元会長は「選考基準と違う基準を適用し、拒否したとすれば日本学術会議法違反になる」と批判する。

 任命拒否を「学問の自由」への政治介入と問題視する。東大は9日、五神真学長名で「同会議の要請への真摯な対応を政府に望む」との声明を発表した。法政大の田中優子総長は5日の声明で「首相が研究の『質』によって任命判断するのは不可能」と表明した。

 政府方針に沿う研究内容を強要されるといった懸念がある。先端研究を助成する防衛省の制度について同会議は、2017年の声明で「政府による介入が著しく問題が多い」と言及した。

 同会議は1950年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わない決意」、67年に「軍事目的のための科学研究を行わない」との方針を発出した。

 

 

 

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