伊達公子さん、ジュニアに伝授「自ら考えるテニス」

 

 

 

女子テニスの元第一人者、伊達公子さんがジュニア育成に乗り出して約10カ月が過ぎた。目先の1勝よりも将来を見据え、個性重視のオーディションで選んだ4人の小学6年〜中学3年生に、自ら考え、答えを見つける指導を心がける。「この年代は目に見えてわかる変化をする」と、手応えを感じている。

 

女子ジュニア選手を指導する伊達公子さん

伊達さんの指導は質問が多い。「上から言われたことに応じるだけでなく、自分で考え、それを言葉で表現することを学ばないといけない」からだ。2月に東京都内で行った合宿では、各選手を3時間ずつ1対1で指導したが、内容は選手に決めさせた。

フォアハンドの強化を選んだ中2の永沢亜桜香さんは、遠くの球が手打ちになりがち。「どうして(打点まで)動かないの? 届かない?」と伊達さん。首を振る彼女に「どうして行けないの?」と畳みかけると、長い沈黙が続いた。

「私は待てない性格。平気でいられない」という伊達さんが見つめて待つ。バツが悪そうな顔を見せ始めると「諦めちゃダメ」と言ってから、スムーズに体を動かす方法を教えた。

テニスは試合中1人で考える時間が長く、瞬時の決断力も必要。難局を突破する答えを自ら見つけなければならない。そんな伊達さんの思いも選手に届きつつある。最年少の山上夏季さんは身長150センチに届かず、コート奥深くに高く跳ねる球がくると見送るしかなかったが、「そういう球を相手に打たせないテニスをするようになった」と伊達さんは目を細める。

目指すのはあくまでプロで活躍できる選手の育成だが、成績も出始めている。中3の奥脇莉音さんは、指導を受けるまでベスト32が最高だった全日本ジュニア選手権で昨季は8強入り。国際テニス連盟(ITF)ジュニア大会のダブルスで2度準優勝した。「以前は勝敗を意識しすぎていたけれど、『せっかく試合するんだから楽しもう』と言われて試合の感じ方が変わり、勝てるようになった」と話す。

収穫が多い一方、合宿は年4回しかない。スタッフらと手分けして選手の拠点を巡回してフォローするが、「習得したことを継続してもらう難しさも感じる」。その対策も練りつつ、世界に出る機会を増やすため、ITFのジュニア大会も立ち上げる予定だ。

「彼女たちとほぼ同世代から(1月の全豪オープンで大坂なおみに勝った)コリ・ガウフ(15、米国)のような選手が出ている。やるべきことはたくさんあると思わざるを得ない。急にはできなくても、すべきことを積み重ねていきたい」

2月の合宿は日本テニス協会の強化担当者も視察した。伊達さんの取り組みへの関心も高まるなか、2年目に向けて「徐々に厳しく、本来の伊達公子でいこうかな」と選手、スタッフに宣言。いよいよギアをあげるようだ。

伊達公子×YONEX PROJECT  15歳以下を対象に2019年5月にオーディションで1期生4人を選出。浅越しのぶ、石井弥起、近藤大生の元プロらもコーチ陣として加わり、2年かけて指導。四大大会のジュニア部門出場を目指す。

 

 

 

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