[社説]WHOの検証と改善は着実に

 

 

世界保健機関(WHO)は年次総会を開き、新型コロナウイルス対策の検証を事務局長に求める決議を採択した。米国は運営が中国寄りだとして脱退をほのめかしたが、無用な対立は混乱を生む。改善すべきはただしながらも、危機克服へ世界が連携すべきだ。

 

世界保健機関(WHO)は年次総会で新型コロナ対応の検証を求める決議を採択した(ジュネーブの本部=AP)

WHOは中国の情報に頼りすぎて感染拡大の勢いを見誤り、警戒の呼びかけが遅れたとの批判がある。ウイルスの起源などの十分な現地調査もできていない。

決議案は日欧やオーストラリアなどが共同で出した。WHOの対応について公正、独立、包括的な検証を早期に始めるべきだとし、感染源などを現地調査などで明らかにする必要性も盛り込んだ。

中国の習近平国家主席も受け入れる姿勢を示したが、調査時期や手法は未定だ。WHOには各国の感染症の検出、追跡体制を監査する仕組みがあるが強制的な実施権限はない。パンデミック(世界的な大流行)が発生した際の権限強化などを検討してはどうか。

台湾の総会へのオブザーバー参加問題は、次の総会に議論を先送りした。中国は反対しているが、新型コロナの感染の抑え込みに成功している台湾の参加は世界の利益になるはずだ。

一方、トランプ米大統領はツイッターで、WHOが30日以内に中国寄りを改める組織改革をしなければ脱退を検討する考えを示した。課題が多いのは確かだが、あまりに性急すぎる。

最大の資金拠出国で研究開発力のある米国が抜ければ、世界の感染症対策が滞りかねない。中国の影響力はかえって増すだろう。

加藤勝信厚生労働相は総会でWHOの新型コロナへの対応や感染源の検証が必要だと訴えるとともに、対策で「地理的空白」を生じさせてはいけないとして、台湾の参加への支持を鮮明にした。

日本はWHOへの世界4位の資金拠出国として積極的な発信を続けるべきだ。欧州などと協力して米国をつなぎ留め、冷静かつ着実な改善を実現してほしい。

 

 

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