コロナと世界(1)
テクノロジーが権力に 仏経済学者ジャック・アタリ氏
新型コロナウイルスの感染拡大は人類にとって歴史的な危機になりつつある。世界は今後どう変わっていくのか。人類はコロナとどう闘っていけばよいのか。
――新型コロナは世界経済をどう変えますか。
「危機が示したのは、命を守る分野の経済価値の高さだ。健康、食品、衛生、デジタル、物流、クリーンエネルギー、教育、文化、研究などが該当する。これらを合計すると、各国の国内総生産(GDP)の5〜6割を占めるが、危機を機に割合を高めるべきだ」
「経済の非常事態は長く続く。これらの分野を犠牲にした企業の救済策を作るべきではない。そして、企業はこれらと関係のある事業を探していかなければいけない」
――世界経済を立て直すのに必要なことは。
「誰も第1の優先事項とは考えていないようだが、ワクチンと治療薬に極めて多額の資金を充てることだ。いくつか支援策は発表されているが、ばかげていると言わざるを得ないほど少額だ。この問題はワクチンや治療薬があれば解決し、なければ解決しない。それにより危機は3カ月で終わるかもしれないし、3年続くかもしれない」
――人類史的にみて新型コロナはどんな意味を持つのでしょう。
「権力の変容が起こるとみている。歴史上、大きな感染症は権力の変容を生んできた。例えば15世紀ごろにはペストの発生を機に教会から治安当局に権力が移った。感染者を隔離するなどの力を持ったからだ」
「その後の感染症で、人々は科学が問題を解決すると考えるようになった。治安当局から医学への権力の移転だ。これまで我々はこの段階にいた。新型コロナの対策ではテクノロジーが力を持っている。問題はテクノロジーを全体主義の道具とするか、利他的かつ他者と共感する手段とすべきかだ。私が答える『明日の民主主義』は後者だ」
――中国では経済活動が再開しつつあります。危機を乗り越えた勝者となるのでしょうか。
「そうは思わない。技術を持った国としての存在感は高まるが内政で大きな問題を抱える。米国内が分断を続け、欧州が中国によるアフリカなどへのコロナ支援を黙認する。この2つの"失敗"が起こらない限り、中国が世界の中心にのし上がることはない。中国という国の透明性のなさに、世界からはますます不信の目が向けられる」
――コロナで大衆迎合主義(ポピュリズム)は勢いを増しませんか。
「当初はドイツ、オランダ、チェコなどで(国境封鎖といった)自国優先の動きがあったが、今は金融でも産業でも欧州の結束が強まっている。結束できないと『各国がバラバラに行動した方がうまくいく』と唱える勢力は力を伸ばすが、私は悲観的ではない」
――日本はどう危機から脱するでしょうか。
「日本は危機対応に必要な要素、すなわち国の結束、知力、技術力、慎重さを全て持った国だ。島国で出入国を管理しやすく、対応も他国に比べると容易だ。危機が終わったとき日本は国力を高めているだろう」
コロナと世界(2)
脅威は続く、科学は途上 京都大学特別教授・本庶佑氏
――新型コロナウイルスの災禍をどうみますか。
「今は緊急事態、非常事態で最大の国難だ。多くの人命が失われ、世界中の経済が大打撃を受けている。重大なのはどれだけ傷を浅くするか。ぬかるみにはまったようなものだから、いかにして脱出するか。そのために何ができるか知恵を絞る。どの国がいち早く抜け出せられるかの競争になる。そのためにウイルス感染をコントロールする。感染者の急増と、それに伴う医療崩壊は絶対に避けたい」
「人々がパニックになるのは死ぬからだ。死亡者を少なくするには治療薬がいる。中国からの研究報告を生かす。推奨している薬はどんどん使う。超法規的に保険適用、あるいは準ずる措置を政府がとるべきだ」
――感染症の脅威から人類はなぜ逃れられないのですか。
「医学は20年前に比べても格段に進歩したが新しいウイルスがでてきたら新しい手立てが要る。物理・化学は論理的で全体の形が確立しているが生命科学はわからないことが多すぎる未熟な学問だ。たった1つの変わったウイルスが出てきて世界がひっくり返るようになる。なんでだと考える人はたくさんいるだろうが、これが現実だ」
「感染症とがんとはまったく違う。感染症は伝搬してあっという間に患者が増える。一方、がんは発症率はほとんど変わらない。治癒率もほぼ同じ。安定した医学的知見が積み重なっている」
「免疫学と一体的で感染症研究を進めなければならない。ウイルスだけをみていても意味がなく戦う人間がどう反応するかを探る必要がある」
――コロナ後の世界はどうなるのでしょう。
「新型コロナの大流行が起こったからといって人の動きを永遠に止めることはできない。グローバル化の流れが逆流するとはみていない」
「中国の動向が大きい。中国発の病気だが、一番早く経済復興にたどりつくに違いない。中国の力がさらに強くなるのか、逆に世界中から冷たくあしらわれるのか。予想できないが、中国の立ち位置、各国の中国を見る目が影響を受けるだろうし、国際秩序が変わる可能性はある」
――日本の課題は何ですか。
「感染症対策は一種の戦争のようなところがある。いざというときには社会システムをコントロールして、かなり強い権限をもって対応する。専門家が平時から政策提言し、行政が実行に移していかなければならないが、日本はそうなっていない。米疾病対策センター(CDC)のように常に目を光らせて、研究と行政との接点みたいなことをやる。医学における自衛隊のような仕組みがないのはよくない」
「IT戦略の遅れ、いかに社会実装されていないかがあらわになった。台湾の取り組みはとても参考になる。マイナンバーが一つのカードで個人の医療情報もわかるようになっている。教育だってオンラインの方が先生と生徒の1対1感が強まる。40人の教室で孤独感を味わわずにすむ。どんどんやったらいい」
コロナと世界(3)
市民の良識、未来を左右 科学史家・村上陽一郎氏
――新型コロナはスペイン風邪やペストなど歴史的な感染症に匹敵するとの見方もあります。
「人によっては生死にかかわるのに軽症や無症状の人もたくさんいる。宿主となった感染者がすぐに死んでしまうとウイルスは広がれないが、歩き回れる宿主も多い新型コロナは拡散しやすい。その点では戦略的に『賢いウイルス』といえる」
「人の行動範囲はかつてと比べて格段に広がったので、ウイルスの広がるスピードが上がり、感染の連鎖を断ち切るのが難しい。治療法やワクチンがない現状では、他人との接触を強制的に断つしかない。医療のキャパシティーを上回ると、重症度に応じた感染者の隔離も必要だ。人がとれる対策は中世や近世とさほど変わらない」
「都市封鎖の手法も古くから使われてきた。14世紀にペストが流行した欧州では、警察や軍隊が出動して隔離し、社会をコントロールした。それでも約3000万人が死んだと推計されている」
――今日も感染症対策のため、やむをえず国民の自由を制約する動きが世界中で出ています。
「中国のように強権的な政権や独裁政治のほうが果断な措置を取りやすいのは確かだ。一方の日本では首相が緊急事態宣言を出すのにも時間がかかった。危機を前にして人権を尊重する社会は脆弱ともいえるが、国家主義や全体主義の台頭は許してはいけない」
「感染症対策という視点でみれば、対策が遅くなるほど感染者は増える。民主主義、自由主義の国家は国民ひとりひとりが自ら良識を備え、合理的に判断して行動するのを理想としている。しかし、いくら情報化が進んで対策を周知しても、すべての人間に実行を徹底させるのは難しい。その綻びが、感染症を防ぐ上では障害となる」
――科学に携わる者の役割は何でしょう。
「人は危機的な状況に陥ると不確かな情報に飛びつきやすい。不安や怒りに駆られ、ものごとを即断してしまいがちだ。科学者には、社会の普通の人々が普通の感覚で抱く疑問に対し、分かりやすく丁寧に説明する姿勢が求められる」
「感染症対策を唱える専門家への不信、デマの流布がみられる。私が研究した中世の欧州ペスト流行時にも、病人と視線を合わせると感染するといったデマが横行した。ネット上には真偽の不確かな情報があふれており専門家と人々をつなぐ科学ジャーナリズムや科学コミュニケーターの役割がより重要になる」
――情報を受け取る個人に必要な心得はありますか。
「一部の権威ある人々がすべてを決定した時代と異なり、今は社会にとって何が合理的なのかを最終的に判断するのは市民だ。個人の良識や常識、健全な思考に私たちの未来はかかっていると再認識すべきだ」
「日本の場合、近代の科学技術が導入された明治期から、実践的に役立つ『技術』を重視する傾向が強かったが、今こそ『科学』的な思想と態度を身に付けるときだ。自然の謎や『分からないこと』と真摯に向き合い、問い続ける。その継続によって良識は養われる」
コロナと世界(4)
市場機能維持、新次元で 前日銀総裁 白川方明氏
――コロナ問題が金融危機に発展しないか、懸念されます。
「未知のウイルスの出現が実体経済の落ち込みにつながり株式相場を不安定化させたが、焦点は金融市場や金融機関自体が引き金となるかだ。特に注目しているのは外貨資金調達、米国債、社債などのクレジットの市場、それに新興国の動向だ。実体経済と金融市場が負の影響を及ぼし合うのが金融危機の本質であり、現時点ではそこまで至っていないが注意は怠れない」
「コロナ危機は金融緩和の長期化に伴う不均衡の蓄積という問題を浮き彫りにした。低金利が続くとの予想から民間は借金を膨らます一方、投資家は運用利回りの低下を抑えたい。結果、金融規制の枠外のファンドに資金が集まり、解約殺到のリスクも高まった」
――コロナ危機で反グローバル化が強まるとの見方があります。
「すでにコロナ問題の前から世界では格差や難民問題、貿易紛争の激化、ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭が起きていた。グローバル化の果実を実感できない平均的な国民の『超グローバル化』への拒否反応も強くなっていた。後退しても不思議ではない」
「ただグローバル化が本当に逆回転を始めると、人々はすぐに生活水準の低下に不満を募らせるだろう。この瞬間もグローバル化は進んでいる。政治家や政策当局者はグローバル化の両面の真実を共感をもって認識した上で各国の協力関係が後退しないよう努力が必要だ」
――世界の中央銀行のコロナ危機への対応は十分でしょうか。
「この局面で中銀の最大の貢献は市場機能の維持だ。今回、主要中銀がドルの融通を強化したり、米連邦準備理事会(FRB)が機能不全の市場で資産の買い入れに踏み切ったりしたことは適切だ。ドル融通については自国優先の傾向が強まるなかで協力関係が維持された意義は大きい。利下げは、余地や有効性の問題をひとまずわきに置いたとしても、人の交流抑制が必要な現在の局面では逆効果だ」
「リーマン危機後の金融規制の強化で金融機関は資本と流動性の両面で損失吸収余力を持っている。ただそれで備えが十分なら(安全資産の)米国債まで売られて現金化したり、投資信託から資金が抜け出したりしなかったはずだ。世界の中銀が巨額の資金を供給している中で流動性の問題が生じたのは政策のあり方を考える上で示唆的だ」
――中銀の役割も問い直されそうです。
「過去30年、世界経済は主役を変えながらバブルと金融危機への対応を繰り返してきた。そして今、先進国の政策金利は全てゼロ金利になった。高金利国だったオーストラリアでさえ0.25%という状況に行き着いた。中銀のあり方を問い直す時期が近づいている」
「経済成長のけん引役は民間で、市場機能の維持など成長を支える金融環境づくりが中銀の役目だ。金融政策は景気や物価を最適と考える目標に向けて微調整できれば望ましいのだろうが、我々はもう少し謙虚になる必要がある」
コロナと世界(5)
争いの時代 協調こそ解 生物地理学者ジャレド・ダイアモンド氏
――人類は過去に多くの危機に直面してきました。新型コロナウイルスの感染拡大をどう位置付けますか。
「14世紀の黒死病(ペスト)では欧州の人口の約3分の1が死亡し、経済が回復するまでに1世紀の期間を要した。世界恐慌は回復までには10〜12年かかったが、今回はより短いだろう。それでも誰もが認める危機であり、若い人はもっとも深刻と感じるはずだ」
「黒死病は影響が大きかったものの、感染が広がったのはユーラシア大陸だけだった。1918年のスペイン風邪は致死率は11%と新型コロナの2%よりも高かったが、感染拡大のペースは緩やかだった。一方、(輸送)技術の発達が不利に働き、今回は4カ月ほどでパンデミック(世界的な大流行)となった」
――備えは十分だったといえますか。
「不十分だった。過去50年にわたりエイズや重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)といった新たな疾病と向き合ってきたにもかかわらず、米国政府は担当機関を解散してしまった。十分な数量のマスクを用意していたフィンランドのような例外はあるものの、多くの国は準備不足だ」
「SARSは野生動物が感染源となり、中国の動物市場から広がった。市場を閉鎖すべきだったが中国政府は見送り、同じパターンで新型コロナが拡大した。中国は伝統的な医療のために野生動物の利用を続けている。このままでは確実にパンデミックが再発する」
――歴史にどのような影響を及ぼしますか。
「新型コロナの封じ込めは世界各国が足並みをそろえないと困難だ。戦いに勝つには国際的な協力体制が要る。世界的な問題を解決するモデルになり、核や気候変動、水産資源の保護といった課題に国際社会が協調して取り組む契機になるのが最良のシナリオだ」
――楽観的すぎませんか。
「不足している人工呼吸器やマスクの購入で複数の国が争うなど悲観的になる理由はたくさんある。一方、ワクチンの開発などで世界中の科学者が連携し、米国と中国も多くの分野で手を携えるなど協力の兆候もある。世界的な問題が解決される可能性は51%と主張してきたが、新型コロナはもっと高いはずだ」
――中国が影響力を強める契機となるとの指摘もあります。
「状況は変わらない。中国は意思決定は早いものの、2000年以上続く独裁的な政治体制は誤った決断を下すリスクを内包している。市民は批判したり、選挙で意思を示したりできない。新型コロナも当初は存在を認めず、公の議論を禁止した」
――日本の現状をどうみますか。
「自国だけは例外と考えることが危機を乗り越える障害となる。米国に加えて日本もこうした傾向がある。都市封鎖や感染経路の追跡にそれほど前向きではないように感じるが、中国や米国と同様に感染者や死者が増えるリスクがある。重篤な症状に陥りやすい高齢者の割合が世界で最も高いことを考慮すべきだ」
コロナと世界 「集まる自由」問い直す 哲学者 東浩紀氏
――新型コロナウイルスは人々の意識をどのように変えましたか。
「人と人がコミュニケーションを取り、移動し集まることが『善』だった時代が、大きな節目を迎えている。2010年代の世界はSNS(交流サイト)とデモのニュースでもちきりだった。つい最近までメディアをにぎわした香港の民主化要求デモを思い浮かべれば分かりやすい。ところが今や、集まること自体がリスクだと感じられる事態になってしまった」
「いざ危機が来たら、人々は移動や集会の自由の制限をむしろ進んで望むようになった。その事実を目の当たりにして驚いている。中国だけではなく、自由や平等、民主主義に高い価値を置いているはずの米欧の市民社会でも状況は同じだ。新型コロナが収束して日常生活が見かけの上で元に戻ったとしても、経験はトラウマのように残る」
――通信インフラが整いテレワークが広がれば、互いに実際に会わなくても社会は回っていくのではないですか。
「決まった作業や講義であれば、オンラインで替わりは利くだろう。だが、新しいビジネスに挑戦するといった創造的な仕事がテレワークだけで成立するだろうか。ネット空間は自分に似た考え方の者ばかりが集まり、創造的な行為に欠かせない異質な存在や意見を排除しがちだ。そもそも通信回線がパンクすればオンラインを前提にした仕組みは崩れてしまう。1つのテクノロジーに依存しすぎると、そのプラットフォーマー(運営者)に安易に操作されることになりかねない」
「移動して直接集まる自由が保障されていれば人は何にも頼らず自力で他人とコミュニケーションできる。人間の歴史の中で育ててきた数ある自由のうち最も根底的なものといえる。移動や集会が制限されている今だからこそ、コロナ後を見据えて、人が集まることの価値を説く理論武装をすべきだ。通信の自由がいくら進んでも、集会の自由の替わりにならない」
――グローバリズムも見直しを迫られますか。
「いまさら国境を閉ざして自給自足やブロック経済に戻るわけにいかないが、これまでは楽観的に過ぎたかもしれない。いざとなればどこにでも移動できるし、誰かが助けてくれる、それがグローバル化の恩恵だと思っていた。現実には、クルーズ船は受け入れ港が見つからず洋上を漂い、海外居住者は争って本国に戻ろうとしている。危機の時にも人々がグローバルなサポートを受けられる態勢を、法律や技術など様々な面で再構築する必要があるだろう」
――大震災や原子力発電所事故の経験に学ぶべきことはありますか。
「専門家の意見を聞いているだけでは百パーセントの真実に到達することはできない点だ。放射性物質の影響も感染症も、科学的事実と人々の生活の現実、心理とは必ずしも利害が一致しない。感染症の専門家は人どうしの接触を避けろと言う。一方で、人が人と会わなければ社会は成り立たない。双方の折り合いをつける必要がある。落としどころを探る役目を担うのは本来なら政治のはずだ」
コロナと世界(7)
危機の記憶、経済の重し 三菱UFJFG会長 平野信行氏
――「コロナ・ショック」はリーマン・ショックを超える経済危機との見方があります。
「リーマン危機が金融を震源に実体経済に波及したのに対し、今回はコロナウイルスという疫病のまん延が世界経済を脅かす。金融・経済環境からみると、経済の基礎体温がそもそも低かったのが当時と異なる。リーマン後に金融緩和を続けてきたにもかかわらず、低成長が定着していた」
――金融危機に発展しないかが懸念されます。
「救いはリーマン危機の教訓を踏まえ、自己資本比率など金融規制の強化が進んでいたことだ。(銀行や投資銀行など)規制対象の金融機関は健全なバランスシートを維持している。ただ監督当局の目が必ずしも届かない市場参加者の状況が読めない。仲介機能を減退させた伝統的な銀行に代わって市場で台頭したのが、年金やヘッジファンドなどの資産運用会社、そしてノンバンクだ」
「借り入れを増やしてまで運用資産を膨らませてきたファンドは、顧客からの現金化の要請や貸し手からのマージンコール(追加担保の差し入れ要求)が強まり、応えきれない例もあると聞く。ノンバンクも似たような状況だ。このあたりの動静が今後の焦点だ」
――世界経済回復への道筋は描けますか。
「懸念するのは世界経済を立て直す原動力が見当たらない点だ。リーマン危機後は中国の『4兆元対策』が世界景気を浮揚させるきっかけになったが、今は中国にその余力が乏しい。当時は米国の潜在成長率も今より多少は高かった」
「さらに厄介なのは、各国政府に国際協調の機運が欠けていることだ。(世界にリーダーがいない)『Gゼロ』の時代をコロナショックが直撃した。そもそも世界的なウイルスの拡散をどうしてもっと早い段階で抑え切れなかったのか。そこが今の危機の遠因だ。不可欠なコミュニケーションをとれなかったことに大きな禍根を残した」
――今回は金融発の危機ではないので、金融政策の効果には限界があるとの見方もあります。
「中央銀行は対策を矢継ぎ早に出している。需要が集まるドルを軸とした流動性の供給と、コマーシャルペーパー(CP)や社債の買い入れを通じた信用の供与だ」
「米連邦準備理事会(FRB)が大量のドル供給に踏み切り、日銀も素早くドル供給オペ(公開市場操作)を実施したのは高く評価する。この結果、欧州銀や邦銀にとってもドルの安定的な調達と取引先への供給につながった。重要なCP市場の崩壊も防がれた」
――各国政府の財政政策も出そろいつつあります。経済活動はいつごろ底打ちするとみますか。
「回復はV字なのかU字か、L字にとどまるのか。正直わからない。コロナの特効薬やワクチンが開発されれば一気に回復する可能性もあろう」
「とはいえ『ブラックスワン』(黒い白鳥=事前に予測できない極端な事象)が、リーマン危機に続いて飛来した事実は、人々の脳裏に深く刻まれた。経営者や消費者マインドの改善に影響を残すおそれがある」
コロナと世界(8)
京大・山中氏 「新型コロナ治療薬、競争より結束を」
――世界的な感染の広がりを予想しましたか。
「油断していた。重症急性呼吸器症候群(SARS)にせよ、中東呼吸器症候群(MERS)にせよ、流行範囲は限られていた。新型コロナウイルス感染症に関しては私自身、2月中旬の段階では大丈夫だろうと思い、いつも通り京都マラソンにも出場していた」
「米ニューヨークの人たちも2月末まで他国の感染拡大を人ごとのように見ていたと聞くが、わずか数週間で感染者は急増した。日本だけ特別に感染が広がらない理由があったらうれしいが、楽観的すぎるだろう」
――感染を食い止めるために私権を制限する動きも広がっています。
「普段、私たちは気付かないうちに社会システムに守られ、研究や移動などの自由を謳歌している。今のような公衆衛生上の危機に直面した場合には、いっとき自由な行動を我慢してでも社会を守らないといけない」
「中国の武漢やイタリア、スペインのような状況では罰則を伴う強硬な措置もやむを得ない。そうならないために一人ひとりが自らの行動を変える必要があるが、メッセージが届かない人もいる」
「非常時に限定する厳密な条件付きなら、IT(情報技術)を使って人々の動きを追うのも効果的だ。すでにネットの利用歴などを通して私たちの行動はかなり企業に把握されている。技術の乱用は防がなければならないが、何でもかんでもダメでは前へ進めない」
――武漢の封鎖は解除されました。
「都市を封鎖し人を家に閉じ込め、ドローンで監視しても感染が減るのに2カ月半かかった。行動制限を緩めたらどうなるか心配だ。外出を厳しく制限した米国でも、死者が大きく減るまでに3カ月かかるという。ウイルスの性質を考えると、途中で対策をやめればピークは再び表れる」
「ほとんどの人は感染拡大の最初の山を越えたら安心してしまうようだが、その根拠はない。有効なワクチンや治療薬が開発されるか集団免疫ができるまで、対策を続けなければならない」
――治療薬の候補がいくつか出てきました。
「まず既存薬の中から使えそうなものを探すが、臨床試験を実施し本当に症状が改善するか統計学的に確認する必要がある。過度の期待はよくない。新型コロナに合わせた新薬も開発していかなければならない」
「我々もiPS細胞で貢献する。肺胞や心臓の細胞を大量に作りウイルスを感染させる実験を始めている。感染の仕方や薬の効き方の違いを調べられ、これまでにないデータが得られるだろう」
――国際研究協力の重要性も高まっています。
「生命科学の分野は非常に競争が激しく、特許戦争がありデータを隠す場合も多い。成果を出してから論文の発表までに1、2年かかることもある。しかし、お金もうけを目的とせず気持ちを一つにすることが大切だ。国の研究費も競争に勝つよりもデータを早く公開し、他と協力した研究者を評価する仕組みがほしい。そうでなければパンデミック(世界的な大流行)に立ち向かえない」
コロナと世界(9)
日本電産・永守氏、新型コロナ「利益至上」見直す契機
――新型コロナウイルスの感染拡大はリーマン・ショックなど過去の経済危機と全く異なります。
「どんなに経済が落ち込んでもリーマンの際は『会社のために働こう』と言い続けた。だが今回は自分と家族を守り、それから会社だと。従業員は12万人以上いる。人命についてこれほど真剣に考えたことはない」
――新型コロナの猛威に多くの企業は立ちすくんでいます。
「今は見えない敵と戦う第3次世界大戦だ。当社は40カ国以上に工場があり様々な情報が錯綜(さくそう)する。指揮官の私が全貌を把握し、すべて決める体制にした」
――国境をまたいだ企業のサプライチェーン(供給網)が分断され、グローバル化の限界が指摘されます。
「逆だ。もっともっと進む。自国にサプライチェーンを全部戻すのはリスクを増すだけだ。40カ国以上に工場を持ち、リスクを分散したと思っていたが、部品のサプライチェーンまで思いが完全には至っていなかった。猛省している。もう一回コロナ感染が広がったらどうするのかを考え、数年かけて作り替える」
「新型コロナで自国優先主義は揺らぎ、改善に向かうと期待している。コロナウイルスの予防・治療薬の開発にも国際協調が必要だ。各国の首脳の発言を聞くと少し反省していると感じる」
――企業のM&A(合併・買収)などへの投資が鈍っています。
「今はキャッシュ・イズ・キング(現金は王様)。企業の買収価格が去年より3割下がっているとしても、現金の価値は5倍や10倍に高まっている。同じ1億円でも去年と今では価値は全く違う。先が見えるまで安易な投資はしない方がいい」
「リーマンの際は中国が世界経済の回復を引っ張ったが、今回は経済的にも政治的にもリーダー役の国がいない。コロナは去っても世界不況はとどまるというリスクを念頭に経営者は俊敏に対応しなければいけない」
――緊急事態宣言に伴い、テレワークが急速に普及しています。
「コロナ終息後は全く違った景色になる。テレワークをどんどん取り入れる劇的な変化が起きる。東京都内の会社に勤める人が山梨県に仕事部屋のある広い家を建てるようなケースが増えるだろう。企業は通勤手当をなくす代わりに給与を上げるほか、サテライトオフィスを作るなど抜本的に環境を改善すべきだ」
――経営者がコロナ終息後を見据えて備えるべきことは。
「利益を追求するだけでなく、自然と共存する考え方に変えるべきだ。地球温暖化がウイルス感染に影響を及ぼすとの説もある。自然に逆らう経営はいけない。今回は戒めになったはずだ」
「50年、自分の手法がすべて正しいと思って経営してきた。だが今回、それは間違っていた。テレワークも信用してなかった。収益が一時的に落ちても、社員が幸せを感じる働きやすい会社にする。そのために50くらい変えるべき項目を考えた。反省する時間をもらっていると思い、日本の経営者も自身の手法を考えてほしい」
コロナと世界(10)
科学を信じ「新常態」に備え WHOの進藤奈邦子氏
――中国はロックダウン(都市封鎖)で新型コロナウイルスの感染を抑制しましたが、イタリアなどは失敗しました。
「中国はSARS(重症急性呼吸器症候群)以来、患者急増時の対応や集中治療室(ICU)の強化など対策を進めた。武漢市には4万人の医療従事者が駆けつけた。シンガポールや韓国などアジアの国に共通するが感染症の経験値があった。欧州は当初は対岸の火事のように見ていた」
――収束への道筋は見えますか。
「新型コロナは微熱などの発症当日にウイルスの量が最も多く、感染に気づかずに人が動くので感染が一気に拡大した。患者が殺到して医療機関が限界に近づけば、助けられる人から助ける、という倫理的に厳しい判断が迫られる。新型コロナとそれ以外の病気に対応する病院を分ける役割分担や、応援体制の準備も重要だ」
「欧州は厳しい外出制限などの効果が出て安定してきた。世界保健機関(WHO)は日常生活に戻すための判断基準を作成した。世界全体ではいったんは感染が落ち着く時期がくる。大事なのは次の波をどう抑えるかで、そのためには国際協調が欠かせない」
――経済活動の再開の手段として感染歴を調べる抗体検査に乗り出した国もあります。
「抗体検査の信頼性はまだ確立していない。抗体をもっていることがどれだけ免疫防御になるのか、有効期間はどの程度なのかなど分からない点が多い。抗体検査の結果で外出制限を緩和するのは時期尚早だ」
――日本がコロナを抑えるのに必要なことは。
「緊急事態宣言はメッセージ性はあるが、規制内容は弱い。感染者の接触歴を徹底的に調査することが最も大事だ。日本は恥の文化が強いので接触調査で正直に言えない人も多い。誹謗(ひぼう)中傷しないで、職場や学校が受け入れることが大切だ。日本人は衛生観念がしっかりしているので、個人が自覚を持って行動して皆で協力すれば必ず乗り越えられる」
――トランプ米大統領がWHOの資金供出の停止を表明しました。
「米国がWHOの根本的な対策を疑っているのか、感染が拡大したからスケープゴート(いけにえ)として攻撃しているのかは分からない。ただ、WHOを潰せば問題が解決するかと言えば、それは違うだろう」
――新型コロナの教訓は何でしょうか。
「21世紀に入って経済や社会活動は点から線に、線から面に、面から立体になっている。今までと物事のスピードが圧倒的に違い、感染症も瞬時に拡大する。新型コロナは異常事態ではなく、『ニューノーマル(新常態)』ととらえて対策を打たなければならない」
「対策の根本は科学を信じること。科学に基づく準備がいかにできているかが、流行を抑制できるかの分かれ目になる。政治家の強いリーダーシップも必要だ。最終的には一人ひとりの行動にかかっているので政府・企業と個人とのコミュニケーションが重要になる」
コロナと世界(11)
危機管理、あり方総点検 内閣官房長官・菅義偉氏
――新型コロナウイルスのような感染症危機を予想していましたか。
「どこの国も予想していなかったでしょうね。第2次世界大戦以来、最大の危機だという人もいる。ヒト、モノの流れが完全に止まっている。そして恐怖がある。治すことのできる薬ができていない初の経験だ」
「まずは欧米のような爆発的な感染拡大を絶対に防ぎ、国民の命と健康を守る。一刻も早く収束させることに全力をあげている。国民には最低限の経済活動を営みながらできる、ぎりぎりのお願い、大変な辛抱をお願いしている」
――海外との人の往来が減り、内向き志向に陥る懸念はありませんか。
「一時的には内外の人の動きが完全にストップしている。しかし、日本経済が今後成長するには海外の成長力を取り込んでいくのは不可欠だ」
「マスクひとつとっても7〜8割が中国で生産している。製品や素材を特定の国に極端に依存せず、生活に必要なものは国内に生産拠点を戻したり、複数の国に分散したりする必要がある。危機管理を考えるうえでも重要な体験だった」
――行政体制に欠けていたものが浮き彫りになったのではないですか。
「政権に大事なのはやはり危機管理だ。霞が関の官僚は優秀な人が圧倒的に多いが、弱点は縦割りだ。霞が関全体で取り組まないと危機管理はできない。新型コロナは厚生労働省だけでは絶対にカバーできない。経済産業省、国土交通省や自衛隊、海上保安庁なども含めて一度に、一挙に動かすことが大事だ」
「クルーズ船のダイヤモンド・プリンセスの旗国は英国で運営会社は米国、船長はイタリア人、乗客・乗員の出身国・地域は56に及んだ。複雑な状況でウイルスがまん延し、対応を迫られた。一段落したら様々な検証をしなければいけない」
――グローバル化のなかでは中国に限らず海外発の感染症が日本に持ち込まれるリスクはこれからもあります。
「日本政府に求められているのは世界すべての国の経験や英知を集めて迅速に対応することだ。中国は大きな経験をした。中国を含め収束に向けて国際的な連携を深めて対応していく必要がある」
「習近平(シー・ジンピン)国家主席の来日は日中が責任を果たしていくことを内外に示す機会として非常に大事だ。きたんのない意見交換ができる関係を維持するのが、アジアだけでなく世界経済の発展や安全保障に極めて大きなことだ」
――収束後の日本は。
「日本はいろんな意味で世界に打って出ていける可能性がある。大企業にも中小企業にも真面目な人材がそろっているのに能力ある人材を活用できていない。個々の組織、会社にとどまって外に目を向けてこなかった。能力をフル活用できる仕組みが必要だ」
「国の基本は自助、共助、公助だ。自分でできることはまずは自分でやってみる。その次に、地域が共助で助け合う。それでもどうしようもなくなったら国が必ず責任をもって対応してくれると国民から信頼される国をつくるのが大事だ」
コロナと世界(12)
企業より労働者に支援を 元米財務長官・サマーズ氏
――新型コロナウイルスの感染拡大で経済や社会にどんな影響が及ぶとみていますか。
「感染拡大のスピードは非常に速く、世界経済は相互に依存しているため、そのなかである国がダメージを受けるとその他の地域にも影響が広がってしまう。こうした前例のない危機に直面し、主要先進国に共通する民主・資本主義システムが機能するのか試されている。私は大きな希望を持っているが、米国の事態をみると不安もある」
――何が問題なのでしょうか。
「米国では検査キットや綿棒、人工呼吸器などが足りない。人員や組織を動員して必要なものを早く生産する能力が試されているが、うまくいっていない。もし連邦政府が重要な医療器具の調達に積極的な役割を果たしていたら、感染者や死者の拡大を食い止めるのにとても効果的だった」
「トランプ大統領は感染の大流行がもたらす経済的な問題について誤解している。今注力すべきなのは感染を減らすための現実的な戦略であり、公的機関の医療専門家の指南を無視した(早期の行動制限解除などの)政策をとるべきではない。より多くの検査を実施して濃厚接触者を追跡したり、患者を隔離する施設をもっと用意したりしなければならない」
――米国には数百ドルのお金も工面できず、病院に行けないひとも少なくないようです。
「私は公的な社会保障制度の拡充を主張してきた。コロナの感染拡大はこうした考え方の正しさを裏付けるものだ。これまで医療費負担の重さが非富裕層の個人を破産に追い込んできた。米国民に現金を給付する政策は良いアイデア。コロナ禍が長期化するなら、1回に限らず、定期的に小切手を送るべきだ」
「経済の長期停滞も問題を複雑にしている。現在の資本主義経済は十分な投資機会を生み出すことができず、余剰マネーが市場に流れ込み、金融資産を押し上げた。この結果、富裕層に富が集中し、格差拡大が深刻になった面がある」
――企業はどう動くべきでしょうか。
「今の時代は株主価値の最大化をめざす企業ほど、長期的な視野に立って従業員の生活や地域社会との関係を重視している。充実した公共インフラなしでは、事業を成功させるのは難しいと理解が広がっているからだ。コロナ危機は企業に長期目線の経営を強く求めている」
「米金融大手ゴールドマン・サックスはこのほど最高経営責任者(CEO)の報酬水準を2割引き上げた。好業績の企業を率いたり、創業したりしている経営者は高い報酬を受け取るのに値する。ただ、国全体が苦しんでいるときに、さらに(高額の報酬を)引き上げるのは正しい選択だとは思えない」
――米政権と議会は航空業界の財政支援を決めましたが、現金の大部分を自社株買いに回してきた企業もあります。
「一般論でいえば、政府の支援は労働者やその家族を対象にすべきだ。向こう見ずな行動をとってきた企業を救うべきではない」
Lawrence Summers 1954年生まれ。経済学者。クリントン米政権下の財務長官やハーバード大学長を歴任。オバマ政権では国家経済会議(NEC)委員長を務めた。2013年に「先進国が長期停滞に陥っている」との仮説を示し、議論を呼んだ。
コロナと世界(13)
ファストリ柳井氏 「企業、英知集め経済維持を」
――日本政府はいま何をなすべきでしょうか。
「経済を殺さずに抜本的な対策をとることに尽きる。全国民を検査し、現実を把握して全国民へ告知する。そして出入国の徹底検査だ。一番の役割は困窮者を全員救済すること。助ける基準をつくり早急に(現金を)支給する。後は自治体に任せるべきだ」
「今の論点は景気対策に終始している。だが産業振興とセットの経済対策でなければいけない。コロナ後を見据えて、どう資金を投じるか。困窮している人は救うべきだが、国から金をもらう習慣ができてはいけない。政府も、国民に何ができるか考えてほしいというべきだろう」
「日本企業の多くが国営企業みたいな意識になっていやしないか。潮流として人工知能(AI)やコンピューターといったはやりの分野へ意識が向きすぎた。世界の良識や英知をもっと頼り、本業でどう貢献できるかを考え、アイデアを世界中に求める。トップが先頭に立ってこの問題に対峙する」
――世界が新型コロナウイルス対策で経済活動の自粛を促しています。
「コロナ退治で国民生活、特に経済を犠牲にしてはいけない。稼ぐ部分がなければ、生きてはいけない。欧州ではスウェーデンの店舗だけが営業を続けられた。政府が個人や企業に関与せず、自らの判断で動いてくれというスタンスだ」
「コロナ収束に向け、政府が休業要請をすることは理解できる。だが一斉に休業する以外に、企業はもっと知恵を絞れるはずだ。コロナと共存し、感染拡大を徹底的に防ぎながらビジネスを継続する方策を考え、そうした策をとることもできるだろう。経済が落ち込めば、社会全てがだめになってしまう。あるのはその現実だ」
「一度止めた経済を再び立ち上げるには時間がかかる。当社は中国でピーク時に半数の約390店を休業した。ほぼ再開したが、売り上げは以前の60〜70%。長期間閉鎖した店に顧客は戻ってこない。他の産業でも同じ。中国でそうなら日本の復活はさらに遠い」
――経営者としてリーマン・ショックや東日本大震災といった危機も乗り越えてきました。
「コロナのまん延で、世界が深くつながっていることを改めて認識した。リーマン当時はスマートフォンも一般的でなかった。ネットやAI、ロボティクスの勃興も含め、あらゆる人々が世界とつながった」
「今回の新型コロナの感染拡大は1919年のスペイン風邪以来の、100年に1度の危機だ。現在の対策では、大不況は避けられない。国際通貨基金(IMF)はコロナの影響で世界恐慌以来の不況になると予測しているがその予測より悪くなるのではないか」
――スペイン風邪のあとには後の世界恐慌や第2次大戦が起きました。
「今回のコロナ禍がそうした悲惨な事態に陥りかねない、という認識を持つ必要がある。世界はつながっている。いつどこに誰が来てもおかしくない。それが世界の事実だ。世界で連携して、どう根治するかを議論する時だ」
やない・ただし 1949年山口県生まれ。84年の「ユニクロ」を開業後、多くのヒット商品を生み出した。26カ国・地域に展開する世界3位の衣料品会社に成長させた。