人生100年国家へ新アプローチ


日本が誇る「商品」に



社会保障改革自民厚労部会長に聞く

 自民党厚生労働部会は年金制度の通知書を変える提言を公表した。年金の受給開始年齢を60〜70歳で選べる仕組みを新たに図で示す。複雑な社会保障制度をわかりやすく伝え、国民の理解を深める狙いだ。その先に何があるのか。厚労部会長の小泉進次郎氏に聞いた。

 


 ■国民に選択肢示す

――社会保障改革の先に描く国家像はどのような国づくりでしょうか。

 「国民一人ひとりが『人生100年時代』を幸せに過ごせる新たな国づくりだ。年金の受給開始年齢の選択肢を70歳超に延
ばすなどの制度改正を検討すべきだ。『人生100年国家』の実現に向けたあらゆる政策やルールは日本が世界に誇る『商品』になる。世界のモデルにしていく」


 『国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)17項目に『人生100年時代の国づくり』を加えるよう日本が提唱すべきだ。日本が今後も世界から必要とされる国であり続けるために必要だ」

――改本をどう進めますか。

 「まずは国民に社会保障制度の内容を届けきる。年金の受給開始年齢が70歳だと65歳の場合より月額が最大42%増える。若い人は『70歳まで頑張ろう』、受給者は『早く言つてよ』と反応する」


 「制度を大きく変えなくても、伝え方の工夫で人の行動を変える『ナッジ』の手法も使って情報を届ければ、長く働くなど人生設計が変わり生きる力になる。『人生100年時代の社会保障』は『選択できる社会保障』だ。国民に選択肢を示す改革の第一歩が始まった。今後は定期健診や介護制度に手をつけていく」

――政府は伝えると国民が反発すると恐れていたのではありませんか。

 「国民が『知るリスク』よりも『知らないリスク』の方が大きい。たとえば高額療養費制度だ。どれだけ医療費がかかっても月額の負上限は平均の所得者で8万円程度だ。ソフトバンクの孫正義氏のような超富裕層でも約25万円。『定額治したい放題』だ。多くの人は制度を知れば『これじゃ回らない』と感じる」

――現在の社会保障を公的負担に頼って維持していくのは難しいです。

 「高額療養費制度の開始時に消費税はなかった。消費税率0%で同じ制度を整備した国はない。制度の持続可能性を高めるため政治が前面に出て制度の理解を促す」


 「フランスでは最近、認知症の薬が公的保険の適用対象から外れた。一定の関連データが国民に提供されており理解を得やすい国だ。日本はさらにデータの信頼性を高めるべきだ。公費の使い方をただすためにも一定のデータの開示が必要だ」

 ■給付見直し逃げずに

――社会保障の維持には負担と給付の見直しが必要ではありませんか。

 「そのためにも国民に知らせて理解を得る新しいアプローチが必要だ。法律や予算を毎年つくれば自然と変わるという従来のアプローチだけでは変えられない。新しいアプローチは財政の制約を踏まえた負担と給付の見直しから逃げない」

――フランスではマクロン大統領が国民負担を増やす改革を進め、国民が暴動を起こしました。


 「求めるべき負担を求めている。だけど国民の納得を得られなかったら、改革の逆づ不が何をもたらすかを表している」

 

 

 

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