ニッポンの革新力
日本苦戦100位内に4校
大学「論文の生産性」
アジア勢と差拡大
日本経済新聞などの調査からは、曰本の大学が研究力で苦戦している姿が浮かび上がる。2012〜16年の「論文の生産性」で100位以内に入っているのは、東京大学、京都大学、東北大学、東京工業大学の4大学のみ。強みのある戦略分野を明確にして競争主義を徹底するアジアの大学の背中が遠くなっている。
生産性でトップだったのは、シンガポールの南洋理工大学だ。シンガポールは人工知能(A1)やバイオなど戦略分野を明確にし、高給を提示して有力研究者を呼び寄せている。「学長は年俸1億円といわれる」 (科学技術振興機構の浜口道成理事長)ほどだ。
2位の香港城市大学や14位の香港科技大学などの躍進は、米国の大学に留学して教授など有カポストで戻ってきた若手研究者の活躍が大きいとされる。米大の徹底した競争主義が持ち込まれているという。
02〜06年のデータをみると、日本の大学は100位以内に8大学が入っていた。アジア勢が実力を大きく伸ばす一方で日本勢は停滞し、相対的な地位の低下が目立つ。戦略分野の絞り込みで存在感を高めつつある日本の大学もある。信州大学は12〜16年の「研究の質」で首都大学東京、東大に続く日本勢3位に入つた。最先端の炭素材料カーボンナノチューブの研究で著名な遠藤守信特別特任教授がけん引役になっている同大はこの数年で研究体制の再編に乗り出している。
14年にはカーボンナノチューブや先進医療など強みとする5分野でそれぞれ研究所を発足。さらに16年には航空宇宙や菌類・微生物などそれに続く5分野で研究センターをつくった。
中村宗一郎副学長は「大学として生き残るには特長を生かした選択と集中が欠かせない」と背景を話す。
調査の概要
2万以上の学術誌を収録するエルゼビア(オランダ・アムステルダム)のデータベースを使い、各大学について4つの指標を算出した。「学術論文数」は所属する研究者が発表する論文の合計。「研究の質」は発表した学術論文の引用数から算出した。「論文の生産性」は引用数が上位10%以内の論文と発表する学術論文の著者数から推計。
「研究層の厚み」は質の高い論文をコンスタントに出せているかを算出した。