日経POS情報 店頭の最新動向把握


「消費者発」がヒット生む



日本経済新聞社は小売店のPOS(販売時点情報管理)データを基に、2018年度上半期(4〜9月)に売り上げの伸び率が高かった人気商品を発表した。サパ缶詰や汗拭きシートなど「健康」や「清潔感」がキーワードとなる商品カテゴリーが上位を占めた。消費者自ら新たな楽しみ方を工夫したことがきっかけとなり、ヒット商品が生まれた分野もあった。

 


 

 

 

「備える」消費に注目

 単身世帯や共働き世帯が増えるなか、「時短」が重要なキーワードとなっている。家事の時間を短縮してくれる商品への人気は根強い。

 時短消費の代表例が商品カテゴリートップ10で1位になった「サバ缶詰」など魚の缶詰だ。日経POS情報によると2018年4〜9月にサバ缶詰の千人当たり販売金額は前年同期比で57%伸びた。下処理が基本的に不要という使い勝手の良さが見直された。一手間加えたアイデア料理が消費者の間で広まったことも人気を後押しした。

 食品メーカーも商機を捉えようと勤く。マルハニチロは、イワシの缶詰でもパンにはさむ具材として提案するなど様々な活用法を発信する。イワシ缶詰の同期間の千人当たり販売金額は83%の大幅増だった。

 カット野菜にも同様の傾向がみられる。生野菜サラダの千人当たり販売金額は18年10月まで11力月連続で前年を上回っている。人手不足が長期にわたって日本社会の課題となるなか、「時短」に価値を見いだす消費者はますます増えていく可能性がある。

 さらに今後の消費トレントとして注目されそうなのが「備える」消費だ。

 今夏に相次いだ台風や地こで消費者の防災意識が高まっている。防災グッズを準備しておくだけでなく、日常の買い物でも飲料水などの生活必需品を買いだめしておく同様の傾向がみられる。北海道の地震や台風の上陸が相次いだ18年9月、ミネラルウオーターの千人当たり販売金額は前年同月に比べて21%増と大幅に伸びた。

 これは被災地だけの傾向ではない。首都圏地盤の食品スーパーのサミットでは、「防災意識の高まりで、9月は水や缶詰など保存系の食品で想定以上の買い込みがあった」 (竹野浩樹社長)という。同社の9月の既存店売上高は前年同月比7.3%増と大幅に伸びた。防災意識の高まりが消費を底上げしている。

 19年10月には消費増税も予定されている。災害だけでなく家計への影響を最小限に抑えるため、「備え」を意識した消費行動が今後、ますます顕在化してくるだらう。

 

  

 

 

 

 

 

 



豆乳飲料食べてみる


 健康志向に加え、消費者主導て新しい食べ方が広がり売り上げを伸ばしたのが豆乳飲料だ。横ばい傾向から今年、拡大に転じた。日経POS情報の千人当たり販売金額をみると、2018年2月は前年間月比O.2%減だったが同年4月に7.4%増、8月には20.2%増と躍進した。

 けん引役はキッコーマン飲料の製品。「キッコーマンの豆乳飲料をパックのまま凍らせて食べるとアイス感覚でおいしい」という一般消費者の交流サイト(SNS)のつぶやきが今年のゴールデンウイークに話題となり爆発的に広がった。

 同社は紅茶やマンゴーなどのほか、焼きいも、おしるこなど個性豊かなフレーバーまで約40種類を展開する。そのことが様々な味わい方を試してみる消費者の動機付けにつながったようだ。同社によると「コーヒーに入れてソイラテにしたり、料理に使ったりと飲用シーンにも広がりがでている」という。

 きな粉も食のシーンが広がり、市場拡大につながっている。真田(京都市)は、テレビ番組などで健康に良いことが紹介されるとともに、みそ汁、牛乳、ヨーグルト、アイスなどにこりかける食べ方が提案されたことが追い風になったとみる。

  「毎日、飽きずに使ってもらうには、フレーバーの種類があったほうがいい」と考える幸田商店(茨城県ひたちなか市)では「黒ごまアーモンドきなこ」や「青汁きなこ」など8種類の味付ききな粉を販売する。

 きな粉は餅にまぶしての利用が大半で、年末年始に稼ぐ季節商品だったが、最近は調味料感覚で使える健康食品として浸透、年間商材として定着してきた。日経POS情報の千人当たり販売金酒でみると、今年4〜9日は前年同期に比べ37.1%増となっている。




女子も冷やされたい 


 日用品では機能を絞った商品が好調だった。洗濯用抗菌・消臭剤が好例だ。日経POS情報によると、2017年4〜9月の千人当たり販売金額は前年同期比18.1%増、18年も同24.3%増と勢いがとまらない。

 先べんをつけたのはP&Gジャパン(神戸市)の「レノア本格消臭デオドラントビーズ」だ。洗濯の際、洗剤と一緒に洗濯槽の中に直接入れて使用する。消臭効果のある同社の柔軟剤「レノア」の5倍の消臭成分を配合し、洗剤や漂白剤だけでは消えない衣類のニオイを消臭・防臭する効果があるという。

 自分の体臭に気をつかうなど男女限らず自分や他人のニオイに敏感な人が増えている。そうした動きに着目、消臭機能に特化することで消費者の取り込みに成功した。

 汗拭きシートもアピールポイントを絞って売り上げを伸ばした。今年4〜9月の千人当たり販売金額では、マンダムの男性向け冷却シート「ギャツビー アイスデオドラントボディベーパー」が首位の座を守った。しかし、メーカー別伸び率では花王が前年同期比53.6%増とマンダムを上回る伸びを示した。原動力となったのが女性を狙って今年2月発売した「ビオレ 冷シート」だ。

 同社の調査によると、有職者の女性を中心に男性同様、暑さで火照った肌を冷やしたいとのニーズが高かった。女性用でも清涼感を訴える商品はあったが、物足りなさを感じ、男性用シートを愛用する人もいた。

 そこで拭いた瞬間に肌の表面温度が3度下がり冷却効果を実感できる 「冷シート」を開発。同性からの人気も高い女性アイドルを使い「スースー感」を前面に打ち出した販促策も奏功し、女性層から高い支持を得た。

 

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