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外 相

河野 太郎氏

こうの・たろう 1963年生まれ。米ジョージタウン大卒。富士ゼロックス、日本端子を経て、96年に衆院初当選。神奈川15区、当選8回。2017年8月から現職。

 


右か左か信念との葛藤

 

小さい頃から本に親しみ、印象に残るのは国際政治関係が多い。

 平塚(神奈川県)の家の隣は本屋さんでした。月々の小遣いのほか、「隣の本屋はツケで買っていい」と父(河野洋平元衆院議長)からお達しがありました。子どものころから本はけっこう読んでましたね。

 慶応義塾中等部のときは、平塚から田町駅(東京都港区)まで電車で通いました。1時間半くらいかかり、行き帰りで単行本を読めたりした。図書の会に所属し、図書館に入り浸っていました。最近は飛行機の中とかを利用して読書します。

 ケネディ元米大統領の『勇気ある人々』は父が持っていました。ちょっと読み、最初はあまり面白くないなと思いました。米国で大学のときにインターンをやりながらきちんと読んだら、非常に重要なことが書いてある。選挙区では右と言われるけど、俺は左に行くべきだと思っている――。自分の信念と選挙区での葛藤が出てきます。

 日本の国会も党議拘束で「与党は全員賛成です」 「野党は反対です」というのは政治を劣化させている。党はこう言っているけど、国益を考えたら俺はそっちだとか、やはり議員一人ひとりが考えないといけません。

 フィリップ・カウリーの『The Rebels』は、英国の与党議員の誰が何回、どういう理由で反対したのかが詳しく書いてある。セオドア・ホワイトの『The Making of the President』は米大統領選挙の本です。1964年、68年版などがあり、その頃の社会状況まで描いていて面白かった。

 『The Fountainhead(邦題・水源)』は、米ハーバード大のサマースクールでルームメートが読んでいました。「それは何の本だ」と聞いたら、「ロビン・フッドは良くない、という本だ」と。分厚くて字も小さいのでその頃は読む気がしなかったけど、その後、ワシントンの本屋で買って読んでみて「ロビン・フッド出てこないじゃん」と。でも言っている意味はよく分かりました。要するにロビン・フッドは人を助けちゃうから、自分で努力しなくなるので良くないということ。なるほどと思いました。


期せずして読んで引き込まれ、刺激になった本も多いという。

 ジョージタウン大に入ったときに、いきなり神学2科目が必須といわれました。国際関係の有名な大学だと思っていたので「なんで神学なのか」と聞いたら、「うちはカトリックの大学だ」と。僕はうかつにも知らなかった。

 聖書学入門では例えば「ノアの箱舟」が出てきて、「神(ゴッド)」と「主(ロード)」という主語が入り交じっています。神と主をそれぞれ段落ごとに続けて読んでいくと話が通じ、これはもともと2つの話だったのではないか。それ以来、聖書学は面白いから読んでいます。バート・アーマンという神学者が書いた『捏造された聖書』は、元の聖書をキリスト教徒がいかに変えてきたかという話。これはオススメです。

 かつてベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)の親会社が撤退し、当時の市長が「Jリーグを残さなきゃいかん」と運動しました。私は後ろでそうだそうだと旗を振っていたら、市長が振り向いて「代表取締役をやってくれ」と。サッカークラブの経営をしなくてはならなくなりました。

 『エスキモーに氷を売る』の著者はNBA(全米プロバスケットボール協会)の弱小球団の社長を頼まれ、売り上げをめちゃくちゃ伸ばしました。本にはどうやってそれをやったかが書いてある。ベルマーレは弱かったが、「こういう考えで行こうよ」と話をしました。まあいろいろ大変でしたけど、いまはJ1に復帰しました。


紹介してもらった本は、9冊中6冊が原書だった。

 海外の本は英文で読む方が多いかな。漢字があるから日本語の方が読むのは速いですが、最近は本が乱造されていて特に翻訳がひどそうな場合は原書にします。小説もダン・ブラウン、ディック・フランシス、バーナード・コーンウェル、マイクル・コナリー、リー・チャイルドとかは、翻訳が出る前に英語版を買いますね。

 


 

【私の読書遍歴】


《座右の書》


『勇気ある人々』(ジョン・F・ケネディ著、英治出版)



《その他愛読書など》

@『水源』(アイン・ランド著、ビジネス社)

A『捏造された聖書』(バート・D・アーマン著、柏書房)

B『エスキモーに氷を売る』(ジョン・スポールストラ著、きこ書房)

C『ベイルートからエルサレムへ』(トーマス・L・フリードマン著、朝日新聞社)

1979年から10年間、ベイルートとエルサレム支局に派遣されたニューヨーク・タイムズ記者の克明な現地報告。中東問題を考える上での基礎になり、今でも役に立つ。

D『マラッカ物語』(鶴見良行著、時事通信社)。

富士ゼロックスに勤めていたときに、地域統括本部を立ち上げるシンガポールに行くよう命じられた。書店でたまたま手に取ったこの本で、東南アジアを勉強した。

E『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(ジョン・ル・カレ著、ハヤカワ文庫)

 

 

 

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