三菱マテ子会社


70年代から不正始まる



最終報告書「知わながら放置」

 

 


 三菱マテリアルは28日、グループ5社による製品の検査不正問題で、社外取締役らでつくる特別調査委員会の最終報告書を公表した。竹内章社長と矢尾宏会長が4月から3か月間、月額報酬の全額を返上するなど、関係者の処分も発表した。また、再発防止に向け、グループ全体の企業統治(ガバナンス)改善に取り組む組織の設置も発表した。
 最終報告書によると、自動車部品製造の子会社「ダイヤメット」の新潟工場(新潟市)では遅くとも1977年頃から、検査成績表の改ざんや、最終検査を実施しないなどの不正が行われていた。2016年当時の経営陣はこうした不正を認識しながら放置し、親会社に報告せず、監査などの際にも資料を隠蔽。今年1月に親会社に内部通報があるまで発覚しなかった。

 子会社の「三菱アルミニウム」(東京都港区)では、遅くとも1990年代に試験データの改ざんなどが行われ、その後に「特採処置実施規定」と呼ばれる不正のマニュアルも策定された。グループ会社の「立花金属工業」(大阪市)では、遅くとも1998年頃から同様の不正が行われていた。

 不正製品の出荷先は2月の調査と比べ、ダイヤメットなど3社で計77社増え、延べ825社に拡大した。

 三菱マテリアルでは、飯田修副社長、小野直樹副社長、柴野信雄専務、鈴木康信専務が4月から3か月間、月額報酬の30%を返上する。ダイヤメットなどグループ3社の幹部計11人も、月額報酬の一部を自主返納する。

 竹内社長は28日、東京都内で記者会見し「非常に深刻かつ重く受け止めている。全役員が不退転の決意をもって問題の解決と再発防止策を実行したい」と述べた。


 一連の不正では親会社の経営管理の甘さが浮き彫りとなった。ダイヤメットの経営陣は「(不正な製品の)件数が多く、すぐに改善するのは難しく、三菱マテリアルに言っても仕方がない」と判断していたという。また、三菱電線工業の経営トップも不正を認識しながら、親会社に報告していなかったことがわかっている。

 竹内社長は記者会見で、「誤った理解、誤った行動と判断している」と述べる一方、親会社についても「情報を吸い上げることができず、グループのガバナンス体制を強化しなければいけない」と語った。

 さらに、法令や規則を守る意識の浸透を図るため社員教育を強化し、グループ全体の企業統治強化に向け、「ガバナンス審議会」を新たに設置すると発表した。

 ただ、抜本的な意識改革がなければ、どこまで実効性があるのかは未知数だ。信頼回復への道のりは険しい。




特別調査委の報告書要旨


 ◆三菱アルミニウム・立花金属工業

 三菱アルミの不適切行為の原因には▽規格順守に対する意識の低さ▽「受注」「納期」偏重の姿勢▽従来の慣行への安易な依拠ーなどがあった。子会社の立花金属に対する管理にも問題があった。三菱アルミで2016年に板製品の試験データ書き換えが明らかになったが、両社はその他の不正行為の発見、根絶の契機とできなかった。このような事態は、強い縦割り意識など三菱アルミの企業風土に根ざすと考えられる。


 ◆ダイヤメット

 不適切行為の原因として、▽工程能力を超える仕様での受注・量産化▽検査人員・検査設備の不足▽納期のプレッシャーや他部門から検査部門に対するプレッシャー――などがあった。

 前社長と取締役が不適切行為を認識後も不適合品の出荷継続を容認していた点は、製造業の経営者として必要不可欠な品質に関するリスク感度に欠けていたと言わざるを得ない。


 ◆三菱マテリアル

 企業風土を改善するため、教育を通じ、前任者の悪弊や法令・規則運反を引き継ぐことはいかなる事情があっても許容されず、自分で始めるのと同じくらい不適切な行為であるという価値観を、グループの全従業員に対して浸透させることが必要だ。

 経営陣は事実を厳粛に受け止め、強い危機意識を持って今後の再発防止に努めるべきだ。





三菱自が教育施設


 三菱自動車は28日、2016年に発覚した燃費データ不正問題など一連の不祥事を教訓として、再発防止に役立てる社員向け教育施設を愛知県岡崎市の技術センター内に設置し、報道陣に公開した。

 2000年、04年と相次いだリコール(回収・無償修理)隠しや、12年のエンジンのオイル漏れリコール、16年の燃費不正といった不祥事の発生経緯や原因分析、再発防止策を記したパネルや、問題となった部品のモデルなどを展示している。

 

 

 

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