深掘り列島民意
自民、学生人気高く
日本経済新聞社が実施する世論調査では、回答者に6種類の職業からいずれかを答えてもらう。定例調査では農林水産業や学生などの対象者が少ないため、誤差幅が大きく比較が難しい場合が多い。しかし、7万人以上の回答を集める衆院選時の情勢調査を使うと、職業の違いによる内閣や政党支持の動向がより正確にみえてくる。
各政党がどんな職業の人に支持されているのか分析すると、2012年12月に第2次安倍内閣が発足してから、自民党が支持層の裾野を広げたことが浮かび上がる。
支持層の裾野広げる
10月の衆院選時の情勢調査で全体の自民党支持率は39%。職業ごとにみると大きな差がある。
農林水産業が53%で最も高く、学生が49%で続く。自営業が42%、無職が39%、サラリーマンや公務員を含む「お勤め」が38%、専業主婦が36%となった。09年衆院選時と比べると、農林水産業以外の5業種に支持が広がったことがわかる。
なかでも特徴的な動きを見せるのが学生だ。今年の衆院選では14年衆院選持と比戟すると自営業や「お勤め」、専業主婦は支持率を落とした。だが学生は14年の48%から49%とほぼ横ばいを保った。09年衆院選時の34%と比べると15ポイントも上昇した。
さらに地域を絞って比較してみよう。東京の学生に限ると自民党の支持率は50%で、09年の39%から11ポイント上昇し。一方、北海道の農林水産業の支持率は09年も今年も40%で横ばい。従来型の地方の農村の支持に加え、都市部の学生など異なる層が自民党に目を向るようになったといえる。
年代別の支持率をみると、さらに近年の傾向が顕著だ。09年衆院選では20〜50代の自民党支持率は20%台だが、60代が32%、70歳以上が40%となり、高齢層ほど支持率が高かった。今年の衆院選では18〜19歳が45%、20代が46%、30代が42%と若年層が40%台で、40〜60代は30%台になり、高齢になるほど支持率が落ちる傾向がみてとれる。
なぜ学生の自民党支持が厚いのか。多くの議員が実感を持つのが就職環境の改善だ。大学生の就職内定率は過去最高の水準で推移する。佐藤正久外務副大臣は衆院選の演説で「この前、女子高生に囲まれて『就職が良くなったので政権を応援したい』と言われた」と自らの体験を披露した。
埼玉大の松本正生教授(社会調査)は「社会に違和感を持たず、無意識に現状維持志向を持つ学生が多い」と分析する。北朝鮮情勢の緊迫や中国の海洋進出、歴史問題で関係がぎくしゃくする韓国の対応を受け、北朝鮮や中韓に毅然とした態度を取る安倍政権の姿勢に若者が共感を得やすいという見方もある。
情報収集の手法の変化が影響している可能性もある。自民党ネットメディア局長の平将明衆院議員は「テレビよりネットの方が政権の評価が高い情報が多く、その情報に接する若者は政権寄りになるのではないか」と話す。支持構造の変化は自民1強の源泉にもなっている。