未来からの警鐘D
防衛予算、国民の納得こそ 増える平和のコスト
2025年度予算、日本の防衛関係費は8兆7千億円になった。予算規模で文教や公共事業を上回り、社会保障と地方交付税に次ぐ。アジアに位置する日本の平和のコストは増すばかり。防衛予算に切りこもうとする財務省には批判が殺到、聖域になった防衛予算を削るのは年々難しく――
世界平和研究所(会長・中曽根康弘元首相)は1月、 「防衛費は国内総生産(GDP)の1.2%を目標にすべきだ」と提言した。こ の提言を踏まえ、内閣府の中期試算とあわせで試算すると、17年度予算で5兆1千億円の防衛費は右肩上がりで増え、23年度に8兆円の大台に乗せる。 1970〜80年代、防衛費は国民総生産(GNP) の1%枠を超えるか否かが争点となった。いまGDP 比で1%弱の水準が続くが。 ロシア(5.3%)、米国 (3.3%)、中国(1. 9%)などより低く、北大西洋条約機構(NATO) が推奨する2%に届かない。世界平和研は「国を守るアセットとしてl.2% が必要な水準だと判断した」という。
世界各国は防衛費を増やしている。ストックホルム国際平和研究所が調べた各国の軍事費をみると、この10年でロシアは4.9倍、 中国は3.2倍、北朝鮮は 1.8倍になった。対する日本は4.6%増。高齢化に伴う社会保障費の伸びが大きく、他の予算を増やす余地が乏しい。小黒一正・法政大教授は 「中国の軍事費が拡大し、 日本への風圧が強まる。社会保障制度を改革して、財政の硬直的な状態を脱する必要がある」と話す。
予算をむやみに増やせばいいというわけではない。 潜水艦や輸送機、戦闘機などの巨額な防衛調達は競争原理が働きにくく、購入額が膨らみがちだ。財務省は 原価の精査を進めている が、不断のコスト削減努カが欠かせない。 米国は自国の防衛装備品の購入を日本に迫ってきている。どのぐらいのお金がいり、何に使うのか、国の安全保証は憲法だけでなく、国民が納得出来るお金の使い方を探る必要がある。財政は国力を移す。破綻すれば、国を守れない。
太田康広 慶大載授
「維持費含め検証を」
日本の防衛費は増えるに任せてよいか。会計学の専門家で、 防衛装備の問題に精通する太田 康広慶大教授に財政健全化との兼ね合いを聞いた。
日本の安全保障環境を考える と、防衛費の増放はやむを得な い。短期的には北朝鮮、中長期的には中国の脅威がある。米国も軍事費を増やしにくく、日 本が肩代わりせざるを得ない面もある。防衛費の国内総生産(G DP)比は1%未満と、国際的に見ても低い。 ただ効率的なお金の使い方で 財政規律を守る必要がある。防衛調達ば高コスト体質からの転換が必要だ。