Financial Times
高齢者の現役続行は悪い?
ピリタ・クラーク ビジネス・コラムニスト
日々雑多な話題が飛び交い騒がしいSNSの中でも、ビジネス向けの「リンクトイン」は普段は穏やかな場所だ。
85歳の英国の名優イアン・マッケラン氏は「脚や肺や頭が動き続ける限り、仕事を続けるつもり」と語った=ロイター
だが少し前、そんなリンクトインが騒然となる出来事があった。米求人サイト「インディード」のページに、職業人生の段階を示す図が投稿されたのだ。21?25歳は「模索期」、45?55歳は「キャリア後期」、そして55?65歳になると「衰退期」に突入するという。
人々は衝撃を受け「ゾッとした」「ショックだ」「なんてこと!」と書き込んだ。インディードは慌てて問題の図を引っ込め、公開したことや、作成したこと自体が間違いだったと認めた。
取材に応じたインディードは各段階で担う役割を否定するような内容を掲載したことを謝罪した上で、こう続けた。「働く高齢者は重要な存在で、指導者のほかメンターとしての価値も非常に高く、職場に大きく貢献している」
悲しいかな、それは誤りだ。高齢者は仕事にしがみついているとみられ、職場では年齢差別がまん延している。
専門家によると50歳を過ぎた人が解雇された場合、新しい仕事を見つけるのは2倍難しいという。労働時間の規定がなく、必要なときだけ呼び出されて仕事をする「ゼロ時間契約」で働く人の割合も、65歳超が16?24歳に次いで2番目に多い。英慈善財団センター・フォー・エイジング・ベターは、イングランドの全成人のうち、貧困率が最も高いのは60?64歳だと指摘する。
高齢のベビーブーマーは急増しており、この問題が緩和される兆しはない。
このような経緯があったため、筆者は最近出会った何人かの80代が今も現役で働くどころか、引退する予定も全くないことに勇気づけられた。
「仕事をしているのは好きだからだ」。85歳の金融経済学者で、米シカゴ大学のユージン・ファーマ教授はなぜ仕事を続けるのかと質問された際、こう答えた。英俳優で85歳のイアン・マッケラン氏も引退は考えていない。「足や肺や頭が動き続ける限り、仕事を続けるつもり」と語っていた。
彼らの後に続こうとしている人もいる。「仕事が好きな間は続ける、絶対に」と話すのは、ヘルスケアの英スタートアップ「ZOE」の共同創業者ティム・スペクター氏だ。あと20年働き続ける気はあるかと問われての答えだ。66歳の疫学者で、英キングス・カレッジ・ロンドンの教授でもある。
働く高齢者は着実に増えている。英国で2023年にフルタイムで働く65歳以上は同人口の4.3%に相当し、10年の2.7%から上昇した。
この記事を読むあなたが20代であれば、こうした高齢者が80代になっても引退しないと就職が危ぶまれると思うかもしれない。しかし、23年にフルタイムで働く英国の80歳以上は、推定で全体の0.06%を占めるにすぎない。
それよりも重要な気づきがある。働く高齢者が、55歳から衰退期入りと分類する例の図を目にしていたら、上司がそれを公開する愚を犯さぬよう止めに入ったに違いない。