あすへの話題

エヴァンジェリカルズ

 

社会学者 橋爪 大三郎


 アメリカで5000万人とも1億人ともいわれる、エヴァンジェリカルズ(福音派)。

 どんな信仰をもつ人びとなのだろう。

 エヴァンジェリカルはドイツでは、「ルター派」の意味。それがアメリカでは、聖書を神の言葉と信じる人びと、という意味になる。プロテスタントの1種だ。

 聖書を「神の言葉と信じる」とは、人間の言葉を信じないぞ、という態度のこと。たとえば書店に行く。たくさん本が並んでいる。みな人間の言葉にすぎない。聖書だけが神の言葉で、これらと別格。判断の規準は聖書だけ、と考えるのだ。進化論や天文学も、本当かという気分になる。

 アメリカにはたくさんの教会がある。主なものは、バプテス卜、長老派、メソジスト、ルター派の四つ。ほかにエピスコパル、会衆派など。福音派は、これらの教会をまたがっている。そこで大きな役割を果たすのが、テレビ説教師である。

 もともとアメリカには、教会の牧師と無関係に、巡回説教師が各地を伝道して歩く伝統があった。教育はないが話がうまい。
 感激して回心する聴衆が続出する。これが現代に甦ったのがビリー・グラハムらのテレビ説教師だ。いまはケーブルTVやメガチャーチに舞台を移している。

 トランプの演説は、巡回説教師さながらである。教育はさておき話がうまい。行儀が悪いのも聴衆に受けている。

 福音派は政治を、宗教の観点で切っていく。市場で貧富の差ができても当然。アメ、リカは神の選んだ国だからアメリカ・ファースト。テロを根絶しろ。複雑な現実が、単純になる。これでは政治にならない。やがて時代に追い越されていくはずだ。

 

 

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