参院選 若者はどうみたか 18歳選挙権の実相

 

投票できる年齢が「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられて初めての国政選挙となった7月の参院選。若者はどう感じ、どう行動したのか。「18歳選挙権」の実相に迫る。

18歳投票率、50%超す

 


 総務省が発表した参院選での18〜19歳の投票率は45・45%だった。18歳が51・17%で、19歳の39・66%より高い。

 計量政治学(選挙分析・世論調査)が専門の明治大の井田正道教授は「特に18歳の投票率は想定より高かった」と話す。2013年の前回参院選の20代の投票率は33%。今回、意外と高かった背景には何があるのか。

 井田教授が大学生293人を対象に実施した調査によると、投票に行った理由(複数回答)で最も多かったのは「投票することは国民の義務だから」の60%。「政治に関心があったから」(36%)や「家族に投票に行くように言われたから」(26%)を大きく上回った。若者の投票行動は義務感によって支えられたとみる。

 今回は初の「18歳選挙権」で総務省やメディアによるキャンペーン効果もあった。井田教授は、高校では
投票を促す有権者教育を受ける機会が多かったため、特に18歳で高かったと分析する。「18歳選挙権」と言われると、18歳の多くの人は自分の問題として意識したとみられる。

 投票しなかった理由は「今住んでいるところに選挙権がない」が47%で最多だった。2位の「忙しかったから」 (39%)、3位の「選挙に関心がなかった」(14%)と続く。

 進学に伴い地元を離れて一人暮らしをしている学生の多くは、住民票を実家の場所に残している。今の住所の選挙区では投票できない。不在者投票をするには、必要書類を住民票のある選挙管理委員会まで郵送しなければならない。手続きを不便と感じる人が多いようで、あまり活用されていない。

 政治や経済の情報を得る手段(複数回答)として最も多かったのはテレビの81%。ネット65%、SNS(交流サイト)58%、新聞24%、ラジオ5%の順だった。

 「初」と目新しさがあったキャンペーン効果は次の参院選や衆院選では薄れてしまう。大学を含めた有権者教育の広がりや、不在者投票をやりやすくする工夫が課題になる。

 若者の投票率の向上を目標にイベントを企画する学生団体ivoteの桑原稜氏(22)は「若者をひとくくりにされても困る」と話す。「大学生も専門学校生も働いている人もいる。求めている数策は違う」と語る。

 

 





「政治に興味ある」9割超


 
投票先、自民が4割 SNS効果薄く

 

 参院選では、若者の多くが自民党に投票した。共同通信社の出口調査では18〜19歳の比例代表の投票先は4割が自民党を占め、民進党の2割弱に大きな差をつけた。

 若者は政党にどんな意識を抱いているのか。人の政治意識は20代前半までに固まるとされる。いま18歳や19歳の人が生まれたのは1990年代の後半。物心ついたのは2001〜06年の小泉純一郎内閣以降だろう。09〜12年の旧民主党政権の挫折や、l2年12月からの安倍晋三内閣の好調ぶりが印象に残っている可能性がある。

 自民党の「金権腐敗」や派閥政治などの古いイメージを直接は知らない世代。自民党への抵抗感が少ないとみられる。とりあえず「いまのままでよい」という安定志向が強いとの見方もある。

 筆者は大学生100人を対象にアンケートを実施した。政治に興味があるかを聞いたところ「ある」は全体の9割を超えた。政治への意識が低いわけではない。

 22歳女性は「政治に興味はあるが、知識不足だと感じる」と話す。政治のしくみだけでなく、次々と生まれる新党を覚えるのも大変なのはその通りだ。

 スマートフォンを駆使する若者にとって、SNSは投票行動にどんな影響を与えたのか。SNSで参院選の投票を促す投稿を見た人は全体の約4分の1。見た人のうち、実際に投票に行った人と行かなかった人はほぼ半々に分かれた。SNSが投票につなげる効果はそれほど大きくはなかったとみられる。

 参院選に関して父親や母親と話した人は全体の6割に達した。話した人のうち7割強が投票所に足を運んだ。

 友達と話した人は全体の4割を超えた。投票に行くかどうかやどの政党や候補者に入れるかをめぐり、参考にするため参院選が話題に上ったようだ。


 18歳の女性は「女性の労働条件の改善や、若者や子どもへの支援をする候補者を応援したい」とコメントした。自分が求める政策が明確だ。「投票したい人がいない」 (18歳女性)という意見は政党に重い課題を投げかける。

 

 

 

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