継命 論説
読経で健康がたもたれる
職業別平均寿命ランキングで第一位に輝いた職業をご存知だろうか? 答えは「宗教家・僧侶」だそうである。そして、私たち信仰者にとって切っても切れないものが「読経」である。
「読経」は、うつ病や睡眠に良い影響があることが証明されており、ストレスによる高血圧や糖尿病を予防する効果が期待されている。これは、読経を行うと「セロトニン」という、人間の心を癒し平常心をもたらす脳内物質が分泌されるためとされる。
セロトニン研究の第一人者と言われる有田秀穂氏(東邦大学名誉教授)によると、まず「読経」の発声法である腹式呼吸をすることで、健康増進や免疫力増強につながり、さらに「お経」を声に出して読むことで脳が活性化し、心と体を整える物質「セロトニン」の生成が促されるという。そもそも「セロトニン」とは神経伝達物質の一種で、@大脳の覚醒レベルを最適な状態にする。Aこころのバランス、怒りや集中力の領域に働きかけて整える。B自律神経のバランス、交感神経と副交感神経のバランスを整える。C痛みの調節をしてくれる脳内にある鎮痛物質。D姿勢・顔つき・見た目。以上、五つの脳機能に関与しているそうだ。
日本は平成12年頃からうつ病と診断される人の数が急激に増えており、その背景は何かというと、脳内のセロトニン分泌が増えにくい社会状況になっていることが関係していると有田教授はいう。
セロトニンの分泌が増えにくい状況下に置かれると、目覚めが悪くなる、不安になりやすくなる、落ち込みやすくなる、集中力が低下する、自律神経失調症、頭が重くなる、イライラする、疲労感が取れない、よく眠れない、見た目も弱々しくなる、姿勢が悪くなる、といった変化が生じ、結果的に「うつ状態」「うつ病」になってしまうという。
爆発的に普及したパソコン、また最近ではスマートフォンを中心とした生活習慣に変化したことで、「セロトニン分泌」を活性化させる因子、ひとつは太陽の光、二つ目はリズム運動を得る機会が減ったことが一番大きな原因だといわれている。
ストレスが多い社会生活において、脳へのストレスが長く続くと、ストレス中枢が直接セロトニン神経を抑制してしまう。脳ストレスがあるとセロトニン神経が弱ってしまい、解決できない問題が続くと、うつ状態になったり、セロトニン分泌を抑えるように脳はできているそうだ。
さて、話を元に戻すと、「お経」はその内容もさることながら、医学的な側面からも耳で聴くだけで精神を安定させるという効能が認められている。また、声が出せないような環境の中でも心の中でお経を唱えることは集中力を高め、右脳の活性化にも役立つらしい。
私たちは幸せな人生を送るために読経唱題をして、読経唱題をすることによって心身共に健康な身体を手に入れ、益々の唱題行に励むことができる。そして、仏の前に座し報恩感謝を胸に念うことができることに、只々感謝するばかりである。