アジア10力国の若者調査
(1) 商品購入時、何を重視?
日本経済新聞社がアジアの主要国で20歳代の消費動向を調べた「アジア10力国の若者調査」では、買い物で「品質」「ブランド」「サ ービス」を重視していると答えた中国人が目立った。 マレーシア、インドネシア、 日本など大半の国の若者が「価格」としたのと大きな差が出た。値段は高くても価値のある商品をしっかり買いたいという意識が強いようだ。
主要都市での調査で「買い物で重視するのは何か」と聞いたところ、価格と答えたのはマレーシアで58%、シンガポールで47%、ベトナムで43.5%などと多く、10力国中7力国で1位になった。だが、中国では7%にとどまり、特に女性に限ると3%にすぎない。
中国人が重視するのは製品の品質(27.5%)、ブランド(25.5%)、機能(15%)買いやすさ(12.5%)、接客サービス(11%)と続く。
「中国の消費者が価格志向型と考えるのは多くの企業が犯す間違いだ。20代の若者、特に女性は可処分所得の大半を消費に充てており 安いものを嫌う」。中国で展開するファッションブランドや飲食チェーンに助言するマーケティング会社、チャイナ・マーケット・リサーチ・グループ(CMR)のジェームズ・ロイ副代表は指摘する。
ドラッグストアでシャンプーを選ぶ際、 若い中国人はまず最も安いブランドを選択肢から外し 格上のブランドから商品比較を始めるという。特にその分野について詳しくなければ、価格が品質の基準になる。安い商品を嫌うのは、食の安全などの問題が多発する中国で「まともなものを安く提供するはずがないとの不信感が根強くある」からとロイ副代表はいう。
一方 シンガポールでは価格重視派が幅をきかせている。「30秒で出品できる」ことをうたう個人売買アプリのカルーセルなどでの売買も活発だ。「マーク・ジエイコブスの腕特計を買ったが円盤が小さすぎて私の好みではない。誰か買わない?」と20代の女性が書き込むと、たちまち女性から買いたいとの連絡が入った。「オフィスも近いようだから、仕事帰りにでも会いましょう」と約束し、売買が成立した。
価格が安いときちんとした店舗で売っている商品でも信用できない中国と、個人売買でも商品を「ニセモノか」と疑うことはあまりないシンガポール。買い物で重視するポイントで調査結果に大きな差が出たのは、価格に対する意識よりも、商品への信頼度が大きく影響している。
(2)金融商品の購入意欲は?
「アジア10力国の若者調査」では、アジアの若者は株式などへの投資意欲が高いことがわかった。マレーシアやシンガポールで金融商品を保有する人が半数を超える。ただ、日本は18.5%にとどまった。ローンではマレーシアが6割に達するなど、借金しても欲しいモノを買う人が目立つ。シンガポールで飲食業を営むリーさん(29)は約1年前、4000S$/(約34万円)を元手に株式投資を始めた。出た利益は全て次の株式購入に充て、現在の株式資産は6000S$にまで増えた。「まだまだ少額だけど、将来はマイホームを買えるくらいまで増やしたい」と夢は大きい。
株式や投資信託など金融商品を持っている人は、マレーシアの60%が最も高く、インドは52.5%、シンガポールは50.5%。中国、タイ、フィリピンも4割を超える。積極的に金融商品を購入するのは、「景気は良くなる」という自信を強く持っているからだ。3年後の生活は「人並みよりも上回る」と答えた人の割合はインドネシアやベトナム フィリピンでは8割を超えている。
また ローンを抱える人の割合は最も低い日本で1割弱、他の国は全て2割を超えた。マレーシアでは6割に達する。貯蓄している人の割合はシンガポールやマレーシア、タイでは9割以上に達し、 日本の82%を上回る。 10力国中唯一「貯金より投資」が「投資より貯金」を上回った中国でさえ 78.5%の若者が預貯金を持っている
クアラルンプールに住む女性会社員 トレイシー・スーさん(28)は国産自動車メーカー「プロドゥア」のミ二ワゴン車を購入した。公共交通機関が未発達なクアラルンプールでは「自動車がなければ通勤もできない」と話す。スーさんは毎月700リンギ(約2万3000円)ずつローンを返済しながら 「退職後の生活費に」と月給の1割を貯金する。
将来の安心を求め、預貯金を持つ人が多いのもアジアの若者の特徴といえそうだ。 アジアの多くの国では社会保障制度や公的医療制度が未発達で、貯金は「いざというときの安心」になる。ベトナムは公的医療保険の全国民加入を目指すが、まだ農村部の住民を中心に保険料が払えず、病院にかかる機会が限られる人が多いのが現状だ。
経済的余裕があり、自国の成長にも自信を持つアジアの若者は金融商品などの購入に積極的で、ローンを組んででも商品を買う。だが、その一方で制度の未整備などから貯金をせざるを得ない一面もある。
(3)働く目的はなにか?
「アジア10力国の若者調査」では20代の若者の職業観や結婚観について聞いた。 それぞれの国ごとに経済の発展段階や伝統的な価値観を反映しており、それは消費行動や売れ筋商品にも表れている
主要都市で「働く目的は何か」と聞いたところ、9力国で「日々の生活のために」がトップだった。日本か64.5%で最も高く、 シンガポール(57%)、マレーシ
ーア(56.5%)が続く。所得水準は高いが、物価も高い国で特に「日々の生活」を選んだ人が多かった。
ただし、中国だけは「豊かになるため」が36%でトップだった。「日々の生活のため」の30.5%を上回った。 急激な経済成長を背景に 強い上昇志向がうかがえる。
目を引くのがフィリピンとタイだ。 「家族のため」と答えた人が各35.5%、35%を占め、 「日々の生活のため」のともに43%に迫る多さだった。 それぞれ特に家族主義が強いお国柄を反映している。
タイ東部のチョンブリ県に住むエンジニア、ジラユット・コモンさん(24)は週末には実家に戻る 月収3万バーツ(約10万8千円)のうち5バーツは欠かさず両親に手渡している。タイの大手銀行系調査会社 カシコン・リサーチセンターのピモンワン・マハチャリヤウォン副社長は「親子の絆が強いのがタイ社会の特徴で、社会人になっても親と同居する若者は多い。年金制度が不十分なため、年老いた親が子に経済的に頼りがちな面もある」と指摘している。
一方 既婚率をみると中国が47.5%と最も高く インド(39.5%)、インドネシア(32.5%)が続く。「一人っ子政策」が長かった中国では 結婚特に親がマンションや車を買い与えるのが当たり前。不動産や車の購入ブームは 結婚事情と密接につながる
20代の3人に2人が独身のインドネシアは結婚となると保守的な考え方が際立つ。「男女が一緒に暮らすなら結婚すべきだ」との答えが95.5%と突出。「結婚したら家庭のため自分を犠牲にするのは当然」が93.5%と、他の9力国を大幅に上回った。
インドネシアでは家族向けの消費が目立つ。新車販売台数のうち、多人数乗りのミニバンの割合は実に4割を超す。
ジャカルタ在住の銀行員 ヘルマワンさんも子供が生まれたのを機に BMW車から日産自動車のミニバン「セレナ」に買い替えた。 「自分のライフスタイ
ルを家族に合わせることがより大事」と言い、週末は家族で買い物や食事を楽しむ。各国の消費市場はこうした価値観によって大きく左右されるようだ。