散歩道 128
寺を維持できない
変化を受容する
大連寺副住職 中原寿衛
先日、「地元のお寺消滅で食っていけないお坊さん大量発生」(プレジデントオンライン)という記事を読みました。その記事によると、現在全国に7万7千の寺院がありますが、西暦2060年には人口が8千6百万人まで減少するため、社会で維持できる寺院は4万2千か寺にまで減ると予測しています。つまり4割以上の寺院がお寺として経営が成り立たなくなるということです。
そのような先行き不安もあってか、各宗派は後継者不足に悩んでおり、現在は全国の寺院の2割以上にあたる1万7千か寺が住職のいない無住寺院となっているとのことです。
決してお坊さんが余っているわけではないので「食っていけないお坊さん大量発生」というより「食っていけないお寺が大量発生」の方が正しい表現だと思います。
そのような未来予測に対して、記事では「寺院同士が提携し、寺院の富を再配分することで助けられる地方寺院があるかもしれない。たとえば、都市型の裕福な寺院が、地方の寺院と提携することである。都会と地方の寺のメリットとデメリットをそれぞれ補完し合う仕組みづくりを急ぐべきだ」と提案しています。
たとえば、地方寺院にあるお墓を残したまま都会の寺院で法事を行い、布施の一部をお墓のある寺院に分配するというかたちがあるそうです。ただ、そもそも日本の人口が減ると分配する富の総量も減るわけですから、寺院の数を維持すれば、みんなで貧しくなっていくことになります。
では、これからも私たちのお寺を残していくにはどうすれば良いのでしょうか。私は解決の方向性は2つだと考えています。
まずlつは、一人のお坊さんが複数のお寺を兼務しやすい環境をつくること。新しい技術を利用してリモートでの法要を行ったり、葬儀も火葬を先に済ませたりすることで、日程の自由度を高めるなどが考えられます。
もう1つは、お坊さんの維持コストを下げること。すでに年金を受け取っていて、子育てもー段落したリタイヤ世代の出家者を募ることが1つの例です。
お寺の4割が維持できなくなる。この現実を重く受け止め、僧侶・信徒ともに大きな変化を受容していくことが求められています。