散歩道 124

失敗から多くを学ぶ

 

タイパ

 

大蓮寺副住職 中原寿衛

 私は先日初めて耳にしたのですが、皆さんは「タイパ」という言葉をご存知でしょうか。これは「タイムパフォーマンス」の略なのだそうです。「コス トパフォーマンス」が 費用対効果を指すのに対して、「タイパ」は投資した時間に対して見返りがどのくらいかを表すようです。

 若い世代では当たり前のように使われているそうですが。要するに同じ若葉が得られるのなら、かかる時間は 短ければ短い方が良い、というわけです。

 そのタイパ世代の最も驚くべき行動は、映画を倍速で見たり、映画の要約動画を見ることです。とにかく話の筋と結末が分かれば良いという感覚のようです。 映画の良さの 一つは、ただ ただ美しい風景が映し出されるようなシ−ンが挟まれるところだと思っている私からすると、「そんなの映 画じゃない」となります。

 そんなタイパ世代の考え方の根底には「失敗したくない」という意識があるそうです。 お金同様、時間も有限なものだから無駄にしたくない、ということでしょうか。

 映画も2時間かけて 「面白くなかった」となるのが嫌だから、あらかじめ数十分くらいでネタバレ動画などを見ておいて「面白そうだな」と思ったら見るのだそうです。

 例えば、サスペンス ドラマで犯人が分かっていたら面白さが半減するのではないかと心 配するのですが、彼らにとっては「犯人が分かった上で見ると伏線惑が分かりやすくて面白 い」となるのかもしれません。先ほど「失敗 したくない」という意 識が根底にあると書きましたが、問題はそこにあるのかもしれません。

 私たちは失敗から多くを学んでいます。他人のおすすめばかりを選んで失敗しなければ、自分の目で物の良 し悪しを見極める能力が養われないのではないでしょうか。

 そもそも失敗しないことがそんなに良いことでしょうか。私も今までの人生を振り返れば、思い出すだけで赤面してしまうような失敗がたくさんあります。しかし、それらの失敗も私の一部であり、消したくても消せ ない顔のシミみたいなものだと思っていま す。

 「失敗してもいいからやりたいことをやる」、そのような人生の方が楽しいと思うのですが、いかがでしょ うか。

 

もどる