いま私たちがやるべきこと〜2030年の信仰

 

「多様性」の未来

 

 

久住寺執事 児玉光瑞

 

◆宇宙人も法華経?

みなさんは、字宙人も法華経を信仰していると思いますか?「オ カルト?」と思うかも知れませんが、少しが まんしてお付きあいく ださい。知性のある宇宙人がいれば、私は彼らも同じく多様な社会を構成し、法華経を信仰する者もそうでない者もいると思います。

なぜこんな話をするのかというと、SFの ような非日常を論理的に考えることは、常識にとらわれず新たな視点を持てるからです。 日蓮教団は歴史上分裂を繰り返し、今なおバラバラです。これはひとえに、自己主張に固執して他の成仏を願 視点を忘れている、つ まり、他者を受け入れる「器」の問題だと思います。日興上人は僧宝、私たちは歴代貫主を含めてみんな凡夫で す。正しいからこそ私たちは、多様な人や社会を受け入れる「器」 になる努力が必要なのです。

◆宇宙に遍満するとは

 「妙法は宇宙に遍満する」。このような表現を、しばしば耳にします。でも「具体的に想像できていますか?」と私は 問いたいです。人間は虚構を信じることで高 度に発達してきました。目には見えなくとも、きっとある抽象化した概念を共有できたからです。だから高度に発達した生命体であれば当然、信仰を持っているでしょう。信仰 とは、目に見えない概念を説明付けるものですからね。そして、妙法が宇宙に遍満するならば、当然そこにも仏がいて、法華経に到達 しているでしょう。

ここからが本題。宇宙のどこかに出現した仏は、果たして私たち と同じ言語で語り、宇宙人も私たちと同じよ うに「なんみょう〜」 と日本語で唱えているでしょうか。きっと違いますよね。宇宙人の言葉で信仰しているで しょう。いや、もしかすると目や耳を使わないコミュニケーションかもしれません。ところが「信心とは総本山の御本尊に手を合わせることだ」と決めつけると、とたんに矛盾が生じます。だって、宇宙人は地球にきて参詣 なり礼拝などしませんからね。身近な例で言えば、目も耳も聞こえない全盲ろう者は、どうなるの?という話 です。彼らは相手の手話や手で触る触手話で対話します。点字を読みます。目や耳ではなく、触覚を使います。 本尊を見たり、お経を聞いたり、題目を唱えたりできない方は大勢います。彼らは成仏できないのでしょうか。 違いますよね。

宇宙に遍満する普遍的な教えというのは、 絶対的に正しいがゆえに、絶対例外があってはいけないのです。だ からこそ、難しい。目先の小さな世界だけで 判断して軽々しく「宇宙に〜」な どと大上段に構えるの ではなく、 もっと多様な世界に眼を向けなくてはなりません。

 ◆本質を考えよう。

大切なのは、本質。 法華経の本質は「妙法の文字そのもの? きっと違います。だって、 日本語で唱えないと宇宙の生物は、だれも成仏できないことになり ます。自分はそれでよくとも、自分と違う例 外に目を向けることは、普遍を考えるヒン トになります。

法華経の本質は一言でいい表せない概念です。だから人によって いい回しが違うのは当然なのです。何であれ、 人は他者と考えを完全一致できません。なので、あれこれ思考をめぐらし、試行錯誤をするしかないのです。私は法華経を「すべてのモノが幸せの境界に到 ること」と表現します が、これは一例に過ぎません。時と場合で表現はかわります。

人や社会は多様です。あなたと違う、変わった考えの人がたく んいます。というよ り、あなたと同じ考え方をする人の方が少ないと心得るべきです。 未来を担うZ世代は法華経を知らないかもしれません。でも、性の多様性についてはあなたより器が大きいかも 知れません。

だから、多様な人と対話しましょう。そし て考え、試行錯誤して 伝えましょう。私たち が多様な人や社会を受 け止められるだけの 「器」になれるように。

 

 

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