いま私たちがやるべきこと〜2030年の信仰

 

SDGsの未来

 

久住寺執事 児玉 光瑞

 

◆SDGsとは

 みなさんはSDGsってご存じですか。国連で決めた世界共通の目標のことです。私は数年前に知りましたが、中高生は既に知っていて、ショックを受けた記憶があります。 最近ではテレビでも耳にすると思います。一 部の脱成長論者がいるものの、あと数年後にはもっと注目され、国会でももっと議題にな るでしょう。

 動起きてテレビつけてスマホを見て、ベー コンエッグを食べ、仕事や学校にいく。こんな当たり前の日常ですら、世界中の誰かが犠牲になっているかもしれません。すなわち世界では、レアメタル・ レアアースをめぐって紛争がおき、無計画な畜産が水不足を引き起 こし、人の移動がエネ ルギー環境問題を引きおこします。

 SDGsの前には開発途上国を対象としたMDGSが採択されま した。それが達成されなかったので、SDGsが採択されました。 SDGsは「持続可能 な開発目標」と翻訳され、貧困・飢餓・教育 ・エネルギー・環境な どの課題に対する目標 を17分類しています。 MDGsと の違いは「具体的な目標設定」 「対象が先進国も含まれる」 「公的 薇関だけでなく営利法人も携わっている」で す。要するに、各国の努力だけではダメで、 世界みんなで協力しないと地球が共倒れになるから、包括的に課題をまとめたのです。

◆持続可能が分かりづらい

 ところで「持続可能な開発目標」ってピン ときますか。それよりも「貧困をなくそう」 の方が理解しやすいですよね。SDGsは17分類169の具体的な目標と多岐にわたりますので、一度に理解するのは難しいと思いま す。しかしそれよりも難解な点は「持続可能  (サスティナブル)」 という概念ではないでしょうか。読めるし理解できるけど、いまいちしっくりこないですよね。

 これまでの社会の多くは持続可能ではなく 「その場しのぎ」でし た。一つ問題が解決すれば、また別の問題が起きる。例えば「貧困 地域に古着を送る」 ランティアは助かる人がいる一方で、その地域の衣類産業を潰してしまいます。そうして職を失った人々は貧困におちいってしまう。 これでは、持続可能とはいえませんよね。このように感情のままに善意を示すことが、持続可能とはならないのが難しい理由です。

◆善でも悪でもない

 実は、日本人が本来的にもう一つピンとこない理由があります。 それは、パリ協定に基づいたSDGsはヨー ロッパ文化圏の発想だからです。SDGsの達成率が軒並み高いの は、人権意識や企業の 責任、環境 などの問題意諧がもともと高いヨーロッパ諸国です。ですから私たちとはもともとの問題意識が違うのです。欧州のイデオロギー(思 想)だから悪いというわけではありません。 なんとなく「SDGs はいいこと」というの も違います。国連で各国みんなに採択されたルールですので、善も悪もないのです。感情で周囲の風潮に流されずに、客観的・理性的に考えることが大切です。

◆本当の価値とは

 ルールがどうであれ善の心で適用すればルールは活きますし、悪用すれば悪法にもなり ます。法華経のイデオ ロギーは「すべてのものを幸せの境界に」と もいえますので、行動原理にこれさえあればルールは活きます。

 どんな社会問題も、 まずは正しく知ることから始まります。SDGs の先にある社会問題と自分たちの関係性を正しく知り、考え、 行い、決心する。すなわち本当の価値とは、 八正道によって正しい方向に導くことなので す。

 例えば、貧困地域に魚を与えることは持続可能とはいえません。 依存心が生まれて、自立できないからです。 魚の釣り方を教えるのも、まだまだ不十分で す。所変われば釣り方も変わるからです。

 仏さまなら、その人なりの魚の釣り方を引き出すでしょう。

 

 

もどる