いま私たちがやるべきこと〜2030年の信仰

 

「安心・安全」の未来A

久住寺執事  児玉光瑞

 

 ○ お手軽な褒め方

他人と、手軽につながることができるインターネット情報発信サービスのことをSNSといいます。その普及率は9割を超え、80代の高齢者でも実に5割近くの人が利用しています。今や、インターネットは誰でも手軽に始められ、ネット上での他人の評価も手軽にできるようになりました。褒め方は「いいね!」のボタンを押すだけ。たったこれだけで好評価の意を表すことができ、逆に他人から「いいね!」をもらうと、他人に認められたような誇らしい気分になります。「インスタ映え」のように、昔だったら見過ごされる日常でも、みんな手軽に自己アピールしあい。「いいね!」で承認しあいます。

 またネット上では近年、過激な発言や批判コメントが敬遠される傾向にあります。誰だって批判されたくないし、それがたとえ他人への酷評であっても、あまりいい気持ちはしません。ですから、SNSには嫌な人の投稿が表示されなくなるブロック機能」があります。それも、遮断した相手には気づかれることはないのです。

こうしてネット社会は、手軽に承認欲求を満たすことができ、しかも嫌な相手と付き合うこともなく、しかし情報そのものは陳腐化してきました。「情報化社会」というと聞こえはいいですが、その本質は陳腐な他人の感想が増えることなのでしょう。

○ 「いいね!」が重要

「事の本質を追求する」ような人は少数派です。それよりも「安心・安全」とか「やさしい」など、深遠な思想はないけど、フワッとした、見た目や耳ざわりのよい「表面上の評価」を重視する人が大多数です。そして大切なものは「お金」から「いいね!」に変化し、 「いいね!」をたくさんもらうだけで豊かな生活ができるのです。昨年の「小学生がなりたい職業ランキング」1位はユーチューバーですが、この結果をみれば一目瞭然ですね。IT先進国の中国では「いいね!」をAIが集計し融資額が決まり、日本でもオンラインショップやグルメサイトの「いいね!」の数を重視します。将釆「いいね!」の価値がさらに上がっていくでしょう。だから、SNSでたくさん自己アピールしなければなりません。

お気づきでしょうか?つまり2030年の日本は、表面上の評価を得るため、自己アビールの強い人が世間から信用される世の中に変わっていくのです。世間から評価され、しかしその内実は私腹を肥やしている人のことを仏教では「僣聖増上慢」といい、日蓮大聖人は三類の強敵に注意しなさいと教えられています。私たちが気づかないうちに、僣聖増上慢がもてはやされて私腹を肥やしている時代に変わってきているのです。

2030年の「実践」

今の状況を「けしからん!」と感情で訴えかけても「ブロック」されておしまいです。そうではなく、ありのままの現実を見定めましょう。大聖人も、当時の学者たちの浅はかな法華経理解に苦悩し、その結果「ツイード」ならぬ膨大な御書でアピールされました。私たちと同じ生身の人間でありながらも法華経のままに生き抜かれたのです。

未来の弘教も同じこです。「いいね!」

偏重は止まりませんし、人の本質も変わりません。人かAIの自動集計かの違いだけです。だったらそれを逆手に取り、本当に人のためになる発信を積極的に行い「いいね!」をたくさんもらえばいいだけです。これが2030年の「実践」です。SNSは単なる道具。善悪はありません。使い方が大事です。SNSの一つであるLINEは、もともと東日本大震災の緊急連絡として役立ちました。大聖人が今おられたら、SNSを使いこなしていたかも。愚者は時代変化にイライラし、ボヤいておしまいです。

 目先の変化に囚われずに本質を見極め、穏やかな心で淡々と実践したいものです。

 

 

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